1月5日:嗅覚を調節する抑制ニューロンの発生(Nature Neuroscienceオンライン版掲載論文)
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1月5日:嗅覚を調節する抑制ニューロンの発生(Nature Neuroscienceオンライン版掲載論文)

2017年1月5日
   動物を生かしたまま神経活動をモニターしたり、操作したりする方法が開発されてからの神経科学の進展はめざましい。今年も多くの論文を紹介することになるだろう。実際、現在のテクノロジーをもってすればかなり解決可能な問題は山ほどある。したがって、問題のありかに気づいて、それに対して妥協せず、最も直裁な方法を採用することがいい研究になるかどうかを決めるのだろう。 
  今年最初に紹介するテキサスベーラー大学からの論文は感覚中枢で働く抑制性の介在ニューロンの機能的発達を調べた論文でNature Neuroscienceオンライン版に先行発表された。タイトルは「Developmental broadening of inhibitory sensory maps(抑制性の感覚マップは発生過程で拡大する)」だ。
   これまで感覚神経投射の発生に関しては多くの研究がある。身体各部位の触覚をなぞっていくと、脳の表面にホムンクルス(小人)が現れるという話は誰もが知っている。視覚や、ヒゲ触覚の研究から、感覚野の発達は刺激依存性で、最初ランダムに結合していた神経同士が、刺激によりシナプス結合を減らして、感覚を研ぎ澄ませていくことがわかっている。しかし、それぞれの感覚神経はそれと結合する介在ニューロンにより調節を受けている。この介在ニューロンの発達についてはこれまでほとんど研究がない。    この研究では、嗅覚神経が投射する嗅球での介在ニューロン、顆粒細胞の機能的な発達、特に感覚神経の刺激依存的発達と同じように、介在ニューロンと嗅覚神経の結合も刺激に応じて減少し、相互作用の特異性が高まるのかどうかを調べている。結果を順に紹介すると、 1) 嗅球の存在する顆粒細胞は、できたての未熟型と、成熟型にDlx5/6及びコルチコトロピンユーリホルモン受容体(Crhr1)で分別できる。 2) 成熟型と未熟型は、生理学的活動電位のパターンが異なる。 3) それぞれの顆粒細胞の活動を蛍光カルシウムセンサーを細胞に導入することで測定できる。 4) 嗅覚神経は発達とともに活動領域が減少するが、顆粒細胞の興奮領域は成熟とともに拡大する。これに伴い、嗅覚刺激によって興奮する成熟顆粒細胞の数は増大する。 5) 鼻を塞いで嗅覚刺激をシャットアウトすると、顆粒細胞の興奮領域は拡大せず、一方特定の匂いを嗅がすことで、その刺激に対応する顆粒球領域も拡大する。 以上が結果で、予想どおり顆粒細胞のシナプス結合も、刺激依存性に変化するが、感覚神経と異なり、刺激によりより多くの神経結合を発達させ、おそらく多くの興奮細胞を制御、チューニングして、多くの匂いを区別するのに関わっているのだろう。     介在ニューロンの発達を調べようと思いたったのがこの研究のポイントだが、この目的のために確かにあらゆる方法が駆使されている。これを見ると、若手研究者にもこのような方法が容易に利用できるように体制を整備すべきだろうと思う。
カテゴリ:論文ウォッチ