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3月9日:世界初の補聴器の二重盲検無作為化試験(3月2日号American Journal of Audiology掲載論文)

2017年3月9日
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    40代半ばから特に右耳の聴力障害が始まって、人の話をキャッチしにくいためいろいろ迷惑をかけてきたと思うが、現役をやめた頃に補聴器を買った。結構高価なもので、オーディオグラム検査を繰り返して自分に合う様細かく調整してもらったおかげで、だいぶ人の声はキャッチできる様になった。
   自分が難聴になったせいか、新聞などの補聴器の宣伝にも目がとまる。専門店で買うより結構安価で、現代の技術水準からすれば通販で買うのもありかなとも思う。
   考えてみると、補聴器はどう選べばいいのか、医療の側からテストされたことはないのではなどと考えていたら、世界初の補聴器の二重盲検無作為化試験であることを強調する論文がインディアナ大学から3月2日号のAmerican Journal of Audiologyに発表された。タイトルは「The effect of service-delivery model and purchase price on hearing aid outcomes in older adults: randomized double blind placebo controlled clinical trial(相談しながら提供する補聴器の販売方法とその値段が高齢者の聴力改善に及ぼす影響:プラシーボを対照に置いた二重盲検無作為化臨床試験)」だ。
   27ページで、図が17、表が11もある長い論文で、この分野に慣れていないので、きわめて読みにくかった。しかし、随所に世界初の補聴器の二重盲検試験であることが強調されている。
   この研究ではマルチチャンネルで調整可能な3600ドルの補聴器を、トライアルに参加した全員に配る。ただ、その時対象を無作為化して、1群には面談しながら個人の聴力に合わせた補聴器を、2群には面談と補聴器は同じだが、最後は全く調整しないで、そして3群には同じ補聴器を面談なしで、自分で3種類の特性から一つを選ばせる方法で提供している。3群はさらに、値段が3600ドルと告げられた群と600ドルと告げるグループを作って、値段によって聞こえ方が変わるかまで調べている。
   現在補聴器を買う時の行動をよく理解して、よく設計した治験と言えるだろう。6週目に補聴器の自覚的効果を聞き、このまま買うか、返却するかを尋ねて、満足度を調べている。結果は以下の様にまとめられる。
1) オーディオグラム検査では、相談しながら調整すると個人の聴力に適合した補正が出来ている。3種類の調整から自分で選ばせると、強い音が出る調整が選ばれ、騒音に対する問題が出る。したがって、もちろん相談しながら調整してもらったほうがいい。
2) 満足度だが、相談して調整した人のほとんどはほぼ満足し、6週間経った後、補聴器をそのまま買うという決断をしている。全く調整しなかった対照群だけでなく、自分で調整する群も満足度は低くほとんどが、補聴器を買わなかった。
3) 3群で3600ドルと告げられた人も、600ドルと告げられた人も、自覚的な改善度は変わらず、ほとんどが買わなかった。
    予想通り検査を受け、それに合わせた補聴器を調整してもらうべきという結論だが、これを確認するためここまで綿密な治験をよくやったと感心する。
   高齢化社会では間違いなく補聴器の需要は大きい。対面サービスが必要だと、どうしても高価になる。もし普及させたいなら、次は自動で対面サービスと同じ調整が可能な、安価な補聴器の開発が必要だと思う。そして是非その機械も同じ様な治験で効果を確かめてほしいと思う。
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