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米国FDAがエダラボン(三菱田辺製薬)をALS進行を遅らせる治療薬として認可した

2017年5月16日
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2015年、137人のALS患者さんが参加したエダラボンの効果を調べる第3相治験で、エダラボン静注によって筋肉低下が33%程度抑えることができるという結果が得られた。この結果を検討した米国FDAは、5月5日、エダラボン(米国ではRadicava)をオーファンドラッグ指定として認可した。FDAにより効果が認められたALS治療薬はなんと20年ぶりになる。(西川記)

5月16日:マクロファージによる抗PD1抗体への耐性獲得メカニズム(5月10日号Science Translational Medicine掲載論文)

2017年5月16日
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    抗PD-1抗体によるチェックポイント阻害治療は、がんの根治を可能にすると大きな期待を集めているが、効果が一部の人に限られ、根治に至るまでに再発するケースが多いことなど、治療費の高いことを考えると、まだまだ改善への努力が必要になる。もちろんそのためには、抗体が効かない個体では何が起こっているのかなど、抗体に耐性を持つメカニズムを解明する必要がある。
   今日紹介するマサチューセッツ総合病院からの論文は、キラーT細胞に結合した抗PD-1抗体をマクロファージがT細胞からひきはがすことが耐性のメカニズムの一つであることを示した研究で5月10日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「In vivo imaging reveals a tumor associated macrophage mediated resistance pathway in anti-PD-1 therapy(体内イメージング法によりガン組織中のマクロファージが抗PD-1抗体に対する耐性獲得に関わることが明らかになった)」だ。
   体内に注射した抗体の寿命は1ヶ月近くあるため、PD-1抗体治療耐性のメカニズムが、抗体の効果が消失する可能性を疑う人はなかった。しかし、この研究グループは、抗体の効果が何らかのメカニズムで消失するかもしれないと疑って、体内でT細胞上の抗PD-1抗体の運命を調べることから始めている。この目的で抗PD-1抗体に明るい蛍光色素を結合させるとともに、腫瘍細胞、そこに集まるT細胞、マクロファージの全てが蛍光で区別できるようにして、腫瘍局所で起こっている抗体と細胞の相互作用をモニターした。結果は予想通りで、最初腫瘍局所のT細胞に結合した抗体が、24時間後にマクロファージの方に移行するのを発見する。すなわち、マクロファージが抗体をT細胞から除去することで、チェックポイント機能が再活性化する結果、治療抵抗性が生まれる可能性が示唆された。
   マクロファージがT細胞に結合した抗PD-1抗体を選択的に除去するメカニズムを調べ、抗PD-1抗体がPD-1と結合するとFc部分がマクロファージのFc受容体に認識されるようになり、これを通してマクロファージに抗体が取り込まれること、またこの取り込みでもPD1はT細胞表面上に残ることを示している。予想通り、マクロファージによってチェックポイント抑制が外されていることが明らかになった。
   最後にこの可能性を確かめるため、Fc受容体を抑制する抗体と抗PD−1抗体を組み合わせて担ガンマウスに投与すると、PD−1抗体投与だけでは完全に抑制できなかったガンの増殖を完全に抑制、根治に至ることを明らかにしている。また、抗体の糖鎖を変化させることで、Fc受容体との結合を低下させることで、マクロファージによる抗体の引き剝がしを防げることも示している。
   抗体が十分体内に存在しても、抗体自体の効果を無効化するメカニズムがあるかもしれないと疑ったのがこの研究の最も重要な点だろう。この結果、根治に向けた新しい治療可能性を示す重要な貢献になるのではと期待される。現在治験も行われているようで、更に期待が高まる。
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