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6月30日:染色体ヘテロクロマチン形成の分子メカニズム(Natureオンライン版掲載論文)

2017年6月30日
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遺伝子の発現調節に関わるエピジェネティックス機構の存在が最初に考えられるようになった一つのきっかけに、染色体のヘテロクロマチン構造の発見があったのではと思う(確かめたわけではない)。染色体上の大きな領域をヒストンや様々な分子とともに凝縮させて他の場所から隔離する巧妙な仕組みだが、これに関わる分子については理解が進んでいる。中でも、heterochromatin1(HP1α)分子は、抑制性のヒストンH3K9meに結合してクロマチンを凝縮させる鍵であることがこれまでの研究でわかっていた。
   今日紹介するカリフォルニア大学サンフランスシスコ校からの論文は、HP1αが染色体を凝縮させるメカニズムを明らかにした研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Liquid droplet formation by HP1αsuggests a role for phase separation in heterochromatin(HP1αの液滴形成はヘテロクロマチン形成における相分離の関与を示唆する)」だ。
   従来の研究から、ヘテロクロマチン形成にはHP1α分子のリン酸化がスウィッチになっていることが示されており、この研究でも様々な部位でリン酸化されたHP1αを調整して研究を進めるうち、N末のリン酸化型HP1αは重合して溶液の中で相分離して液滴を作ることに気がついている。
    相分離は当然構造変化につながるため、これがヘテロクロマチン形成の物理化学的基盤になると着想して、HP1αが相分離する条件を調べている。
   様々な実験を行い、
1)リン酸化は引き金で、重合が進むと自然にそう分離が起こる。 2)C末領域がHP1αの重合を抑制しており、shugoshinなどの分子が結合できると、HP1αの重合と相分離が起こる。すなわち、この抑制を外すあらゆる条件は相分離を促進する。
2) HP1αがヒストンだけでなく、DNAに直接結合することで重合と相分離が促進される。
3) 伸びたDNAストランドにHP1αが結合すると、相分離によりDNAごと大きな凝縮塊が形成される。
4) 相分離した複合体に、H3K9meなども取り込まれる
などを示している。
  以上の結果から、HP1αのN末がリン酸化されると、他のHP1αとの結合が促進され、これにより元々重合阻害を行っていたC末の機能が低下することでさらに重合が進む。このコアを中心にした重合には非リン酸化HP1αも加わり、相分離を促進する。こうして、ヘテロクロマチンが他の場所から完全に隔離された状態が生まれることになる。
   なかなかうまくできた機構だと納得するが、実験中に生まれた相分離に気がついたことがこの研究の全てだろう。
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