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7月16日:なぜ農家で育つとアレルギーにならないのか(Journal of Allergy and Clinical Immunology掲載論文)

2017年7月16日
昨年9月、農家で育った子供がアレルギーになりにくいことを報告したThoraxの論文を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/5850)。
乳児期に腸管から抗原を取り込むと、アレルゲンに対する抑制性T細胞を誘導して、将来のアレルギーを防ぐという通説の枠内で説明したが、本当に農家で育つと多くのアレルゲンに晒されるのかはわからない。農家で育つことで多様な腸内細菌叢を形成されるので、これがアレルギーを防止するという考えもある。
   今日紹介するスイスダボスにあるアレルギー研究センターを中心にする研究は、人間には存在しないが多くの家畜の細胞に発現しているN-glycolylneuraminic acid(Ne5G)に晒されることがアレルギーを防止していることを示した面白い研究でJournal of Allergy and Clinical Immunologyオンライン版に掲載された。タイトルは「Exposure to non-microbial N-glycolylneuraminic acid protects farmer’s children against airway inflammation and colitis(細菌叢に由来しないNe5Gへの暴露は農家の子供を気管の炎症や腸炎から守る)」だ。
   この研究は最初からNe5Gの役割にフォーカスを当てており、農家の子供とそれ以外の子供のNe5Gに対する抗体を調べている。人間は元々この物質を作ることができないので、暴露されると抗体ができる。実際、農家の子供はNe5Gに対する抗体が高く、しかもこの抗体価に比例して喘鳴(ゼーゼーとした呼吸)や、喘息の頻度が低下する(示されている差は極めて大きい)。はっきり言うとこの研究のハイライトは、この調査結果と言える。
   あとは人間では実験できないのでマウスを用いて、気管炎症を誘導するとき、毎日Ne5Gを摂取させると、アレルギー性炎症を抑えることができること、また腸管のアレルギー性炎症も同じようにほぼ完全に抑えることができること、そしてこれらの抑制が、IL-17を発現した炎症性T細胞の低下を伴っていることを示している。
   最後に人間に戻り、試験管内で樹状細胞、T細胞を培養するときNe5Gを転嫁する実験から、Ne5Gが樹状細胞を介して炎症性T細胞を抑えることを示しているが、この結果の歯切れは悪い。
   メカニズムはともかく、Ne5Gを毎日服用することでアトピーを防げることがわかったことは重要だ。もちろんすぐこの結果に飛びついて、子供に服用させるのは待つべきだ。Ne5Gは炎症やガンを誘導するという論文もある。農家の子供についてもう少し詳しく調べてから、都会の子供にも恩恵がいくよう時間をかけて進める必要があると思う。 
カテゴリ:論文ウォッチ
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