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11月14日:腸内細菌叢はガンのチェックポイント治療にまで影響するのか?(Scienceオンライン版掲載論文)

2017年11月14日
我が国のマスメディアの扱いが大きい研究分野で言えば、iPSは別格として、やはりPD-1に対する抗体を用いるチェックポイント治療と、腸内細菌叢と様々な疾患の関係だろう。マスメディアが注目するのは、一般にわかりやすいからという理由だけではなく、多くのトップジャーナルでこの2領域に関わる論文の数は多いからだと思う。NatureやScienceに限ってみれば、現在掲載回数の多い領域は、遺伝子編集、チェックポイント治療、腸内細菌叢の3領域で、iPS関連論文を凌駕しているのではないだろうか。
こんな状況なら必ず調べる人が出てくると思っていたが、今日紹介するフランスINSERMからの論文は腸内細菌叢がチェックポイント治療に影響があるのではと調べた研究でScienceオンライン版に掲載された。タイトルは「Gut microbiome influencees efficacy of PD-1-based immuneotherapy against epithelial tumors(腸内細菌叢は上皮腫瘍に対する血PD-1ベースの免疫療法の効果に影響する)」」だ。

「人気の分野を2つ合わせてウケを狙うとは品がないな」と読み始めたが、最初から臨床的には重要な仕事であることがわかった。もし腸内細菌叢が良くも悪くもチェックポイント治療に影響があるなら、抗生物質で細菌叢が変化した場合、抗PD-1抗体の効果が変化するはずだと考えた筆者らは、一般抗生物質とPD-1抗体の併用効果についてマウスで調べ、抗腫瘍効果が一般抗生剤で低下することを明らかにする。次に同じことが人間でも言えるのか調べる目的で、非小細胞性腺ガンの患者さんでPD-1治療を受けた人のデータを集め、生存曲線を描いてみると、抗生物質を併用した人では抗体の効きがはっきり低下していることがわかった。

抗生物質の使用の有無と、がんの進行度など本当はさらに詳しい検討が必要だが、チェックポイント治療を考える時、この結果は重要だと思う。そこで、PD-1治療の効果があった人と、なかった人で腸内細菌叢の構成を調べると、期待どおり大きな違いが認められる。特に、A muciniphiaという細菌が存在すると治療成績が上がること、またこの細菌に対するTh1細胞の反応と治療成績が相関することを見出している。

人間でのこれ以上の解析は難しいので、無菌マウスに患者さんの便を移植する実験で、PD-1抗体の効果が見られた患者さんの便ではマウスでもいい効果を持ち、逆に効果のなかった患者さんの便は抗体の効果を悪化させることを示している。そして最後に、抗生物質投与でPD-1抗体が効きにくくなったマウスにA muciniphiaを移植すると、腫瘍部位のTh1細胞や樹状細胞の浸潤が高まり、効果が回復することを示している。

最初は少し品のない論文かと思って読み始めたが、臨床的データが示されている点で、チェックポイント治療をさらに効果のある治療にするには、重要な貢献である確率は高い。また同じような内容の論文が、テキサスのMDアンダーソンガン研究所からも Scienceに報告されており、信用性もあるように思える。期待が持てる話だと思う。
カテゴリ:論文ウォッチ
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