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11月15日:組織適合抗原(MHC)が発ガン遺伝子を選ぶ:免疫監視機構の証拠。(11月30日発行予定Cell掲載論文)

2017年11月16日
2日間にわたってチェックポイント治療の研究論文を紹介してきたが、言うまでもなくこの治療はガン細胞に蓄積する正常細胞にはない突然変異を持ったタンパク質由来のガン特異的ネオ抗原の存在が前提になっている。そして、このネオ抗原は突然変異タンパク質がプロテアソームで分解されできる短いペプチドが組織適合抗原と結合してT細胞に提示される。

これについてはしっかり理解しているつもりでも、MHCにより発ガン遺伝子が選ばれる可能性について今日紹介するフォックスチェースがん研究所からの論文を読むまで考えもしなかった。論文のタイトルは「MHC-I genotype restricts the oncogenic mutational landscape(MHC-I遺伝子型が発ガン遺伝子のレパートリーを制限する)」で、11月30日発行予定のCellに掲載される。

著者らは、発ガンに細胞の自発的増殖を誘導する分子のアミノ酸置換を伴う変異が必要なら、変異分子由来のペプチドがMHCと強く結合すれば、異物として排除されるはずで、特定の変異がガンのドライバーとして働くためには、異物として認識されないこと、すなわちMHCとの結合力が弱いことが必要となるのではと着想した。クラスI MHCは発ガンの初期過程では、細胞に例外なく発現しており、このためMHCと強く結合するドライバー分子を持った細胞はすぐに除去されるというわけだ。

この研究ではこれまでネオ抗原を予測するプログラムを改良し、変異ペプチドとそれぞれのMHCとの結合を定量する指標を開発している。次に五種類のガン細胞株を用いてこの指標から強く結合していると予測されるペプチドと、実際のMHCと結合しているペプチドが強く相関することを確認している。

次に患者さんの持っている六種類のMHCそれぞれの結合の強さを統合したPHBRと呼ぶ指標を開発し、ゲノム解析が行われたガンのデータベース(TCGA)を使って、MHCと発ガンに関わる突然変異との相関を調べ、発ガンに関わる遺伝子の種類がMHCの種類と一定の相関があることを見出す。しかし、ガンによっては全く相関を示さないもの、また突然変異も生まれつき持っている場合はMHCとの相関がないこと(トレランスによる)を見出している。

特に相関が高いのは、発ガンに特定の遺伝子変異が関わる場合で、例えばBRAFの変異が60%近くで見つかる甲状腺癌や、IDH1の変異が70%近くで見つかるグリオーマでは、ガンになる人のMHCにバイアスが強くかかる。すなわち、変異ペプチドと弱くしか結合しないMHCが選ばれる。

最後に9000人余りのガンゲノムデータベースをもう一度サーチして、発ガンが突然変異だけで決まるのではなく、MHCに関わる免疫反応の影響を受けており、MHCとの結合が低いほど高い頻度で同じ変異がガンで起こることを確認している。

これまで、発ガンを抑える免役監視が起こっていることが繰り返し提唱されてきた。ただ、確たる証拠が人間のガンで示されたことはなかったと思う。その意味で、何十年来の免疫監視の証拠がついにつかまったと少し興奮する。またMHC型から将来なりやすいガンをリストすることも可能で、期待したい。

カテゴリ:論文ウォッチ
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