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1月3日自動運転(12月15日号Science掲載レポート)

2018年1月3日
正月3日目、最後の話題は自動運転だ。テレビでも1昨年までは自動ブレーキだったのが、例えばニッサンの最新のリーフのように、TVで自動運転の能力をアピールする車が2017年は増えてきたように思う。これが2018年どう進展するのか、機械学習より一般の注目度は高いはずだ。

実を言うと、私はこれまで運転免許証なるものを持ったことがない。もちろん車を運転する経験はゼロで、常に「乗せられ族」として過ごしてきた。そして世の「乗せられ族」は密かに自動運転車に期待を抱いているはずだと勝手に思っている。免許なしで自動運転車を乗り回す可能性はお金には変えられない。

自動運転車も免許が必要だという話に政府はしたがるかもしれないが、そうは言わせない。というのも、自動運転車を最も期待しているのがタクシーや公共交通業界だ。もし運転手のいないタクシーに乗っていいなら、自動運転車を買って乗り回して何が悪い。

しかし、実際のところどこまで自動運転車は進んでいるのか?免許のない私が車を買うことが可能なのか。そんなことを密かに考えていると、Science誌のレポーターが自動運転車の現状を分析した記事を掲載したので、早速読んでみた。

結論から言うと、メディアやメーカーはそんなに待たなくても私が車を買える日が来るように宣伝しているが、おそらく私の生きているうちにはそんな日が来ないことがよくわかった。このレポートのタイトルは「Not so fast(そんなに早くない)」だ。

まず自動運転と言っても、ドライバーが全てを行うレベル0から、人間が全く何もしなくていいいレベル5まで6段階に分かれており、結局現在買うことができるのは、自動車専用道路でなら車に任せることができるレベル3のようだ。ただ、おそらく消費者はもっと高いレベルを自動運転の宣伝で抱いているはずで、その結果2016年テスラのオートパイロットを信頼しすぎた事故が起こることになる。もちろん現段階でも天気が良くて、整備された一般道なら自分で走るレベル4の車を市場に出すことはできるらしい。しかし、どんな天気でも、行きたいところに連れて行ってくれるレベル5が達成されるのは2075年前後のようだ。とすると、まず免許のない私が生きているうちに車のオーナーになることはないことがわかった。

このレポートは、それでも様々なレベルの自動運転車に備えて、社会や消費者の方も幾つかの項目で準備が必要であること、これまで行われた研究を元にしてうまくまとめている。議論された各項目について見ておこう。

安全性

昨日紹介したように、機械学習ではエラーを許容することが重要になる。また、何か起こってもその理由を特定することは難しい。一方、現在の自動運転の宣伝を見ると、前後左右完全に安全性を確認して運転が行われるとほとんどの人が期待してしまう。その結果、自動運転では決してエラーが起こって、交通事故が起こってはならないと思ってしまう。
それでも、レベル3でも、交通事故による死亡を半減させる可能性を示す研究がある。また、自動運転も機械学習なので、公道を走ることでさらに安全性を高めることができる(ランド研究所の調査)。これらのことから、完全でないことを皆が理解して、早期に導入を図るのが良いと結論している。

運転手付きの車?

自動運転車は運転手付きの車と言える。そこで、一般の家庭に運転手をただで派遣して運転を肩代わりしてもらうと、車の利用パターンがどう変わるかという研究をサンフランシスコで行った研究者がいる。結果はなんと76%も利用率が上がる。特に高齢者では利用率が3倍に上るという結果だ。とすると、国や自治体も交通量の増加に備える必要がある。

車で仕事ができる?

我が国で見かけないが、米国では自動運転で運転中に仕事が可能と宣伝しているようだ。しかしわかってきたことは、自動運転車に乗って本を読もうとすると12%の人が乗り物酔いにかかることだ。今後、そこまで考えた車の設計も重要になる。

個人所有かカーシェアか?

自動運転が普及すると、自分で車を持つ人は減ると予想する研究者が多い。ただ、利用率や目的に合わせた値段の異なるパッケージが提供されるだろう。ただ、このパターンの変化は自治体の政策により大きく左右される。おそらく、都市と地方で政策も異なり、公共交通との連携や補助金行政が問われることは間違いがない。その意味で、交通システムの大改革につながることは間違いない。

メーカーの狙いは?

GMの担当者に聞くと、最初の狙いはタクシーを自動運転に変えることで、これだけでGM本体もタクシー提供者として、一台あたり今の何倍もの利潤を上げることができる、現在より30%利益が上がるようだ。確かに、自動運転車なら運転手を集める必要がなく、車メーカーが直接新業種に参入できる。「運転手をなくす」がメーカーの狙いかもしれない。

政府の対策は?

自動運転車の問題は、メーカーの技術開発以外の研究があまり行われていないことだ。しかし、間違いなく交通システムを変え、運転手という雇用形態を消滅させる技術だとすると、公共機関や大学でももっと研究が進み、それに基づく準備が必要になる。

それにはまず、実験を容易にする規制の緩和、自治体間の連携が必要になる。更には、テロリストが自動運転車を使う可能性すらある。

政府もタクシー会社が消え去る可能性のある大きな転換期であることを理解して、大きなパースペクティブで、エビデンスに基づいてこれに対応する必要があると思う。

このレポートは最後に、「自動運転車は私たちを助けるのか、溺れさせるのか?」と聞かれた政策研究者が答えた一言、「個人的には、簡単に白黒つけられない問題だと思う。というのも、多くの変動要因が多く、多様性があまりにもありすぎる」で締めくくっている。いずれにせよ、私が車の所有者になる初夢は消えた。
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