2月13日:ドーパミンの分泌機序(2月8日号Cell掲載論文)
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2月13日:ドーパミンの分泌機序(2月8日号Cell掲載論文)

2018年2月13日
昨日に続いて、パーキンソン病理解に関わる基礎研究を紹介する。昨日の研究では、ドーパミン神経(DN)の興奮が運動中ではなく、運動を起こす少し前に起こって、その後の運動のスムースさを調節することが示された。運動の前に起こるDN興奮を誘導する上流の刺激は重要な問題だが、DN興奮によりどのようにドーパミンが分泌され、線条体の神経にシグナルを伝えるかという下流の問題も重要だ。

  京大の金子さんたちの解剖学的研究では、一個のドーパミン神経は極めて長い神経突起を投射して多くの線条体神経と接していることがわかっている。ただ、ドーパミンは、シナプスでの神経伝達とは異なり、ドーパミン受容体がシナプスにまとまって存在しないため、ドーパミン分泌する側も、シナプスのような構造を取らずに、ドーパミンを軸索全体から分泌するのではと考えられてきた。この考えが、パーキンソン病の治療として、ドーパミン合成系遺伝子を黒質細胞ではなく線条体細胞に導入する遺伝子治療の基盤になっているように思う。

今日紹介するハーバード大学からの論文は、ドーパミン分泌もシナプスでの神経伝達に近い形で、軸索の一部で行われることを示した研究で2月8日号のCellに掲載された。タイトルは「Dopamine secretion is mediated by sparse active zone like release sites(ドーパミンの分泌はまばらに存在するシナプスのアクティブゾーンに似た分泌部位で起こる)」だ。

通常の脳神経間伝達では、スパインという軸索から飛び出した構造がシナプスを形成し、この場所でだけ神経伝達因子が詰まったシナプス小胞が、アクティブゾーンと呼ばれる足場で神経伝達分子を分泌するように構造化して、効率の良い刺激伝達を行う仕組みを持っている。 一方、ドーパミン神経では、スパインの代わりにvaricoseと呼ばれる軸索の膨らみが存在し、ここにドーパミンを含む小胞が局在している。この研究では、このvaricoseでのドーパミンも分泌でも、アクティブゾーン依存的に行われているのではと着想し、超高感度顕微鏡でDNの軸索を観察し、アクティブゾーンを形成するRIM,ELK,Bassoon分子が一部のvaricoseに局在することを発見する。 次にDNでそれぞれの分子のノックアウトをする実験を行い、RIMが欠損するとドーパミンが全く分泌できないことを明らかにしている。ただ、ELKのノックアウトでは分泌に問題はないので、一般のスパインに存在するシナプスとは異なる独自の分泌メカニズムを構成していることを突き止める。

最後にDN軸索中のvaricoseのどの程度の数が興奮により分泌されるのか調べ、RIMやBassoonが集合した足場を持つVaricoseは30%に過ぎないことを示している。すなわち、スパインと同じように、軸索の一部でだけ神経伝達が起こる構造になっていることを明らかにした。 多くの実験を、脳のスライスを用いて行っており、このようなアクティブゾーン依存性の分泌がDNの生理的機能にどう関わるのかを突き止めるところまでは至っていない。ただ、昨日の論文から、DNの興奮が一過性であること、運動自体にはDNの興奮は必要ないことなどを合わせて考えると、一部のvaricoseでだけシナプス型の早い分泌が起こることは納得できる。もちろん、分泌されたドーパミンを受ける側はvaricose部位とシナプスを形成しているわけではないので、分泌されたドーパミンの拡散が必要だが、濃度勾配だけで相手側の特異性が決定できるのかも今後の課題だろう。

それでも、漠然とドーパミン分泌として思い描いていた様式が大きく変わることで、症状を新しい目で見る必要が出てくるだろう。この結果が、実際の病態理解へトランスレートされていくことを期待したい。
カテゴリ:論文ウォッチ
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