4月19日:眠りが妨げられるとアルツハイマー病の危険が増す(米国アカデミー紀要掲載論文)
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4月19日:眠りが妨げられるとアルツハイマー病の危険が増す(米国アカデミー紀要掲載論文)

2018年4月19日
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若い時はよく寝れたように思うが、ここ数年、睡眠時間は5時間前後になっている。短いと言われるかもしれないが、特に体調がすぐれないわけでもないので、気にかけることはなかった。ところが、最近睡眠時間が短いと、アルツハイマー病のリスクが高まることを示す論文を目にするようになって、少し気にはなっている。というのも、2013年このブログで紹介したように睡眠は覚醒時に脳に溜まった様々な老廃物を排出する機能を担っていることが広く認められるようになってきた(http://aasj.jp/news/watch/608)。これが正しいとすると、当然アルツハイマー病で脳細胞を障害する重要な原因として考えられているアミロイドβ(Aβ)を脳外へ排出する効率が、睡眠時間が減ると低下することになる。

これを裏付けているのかどうかわからないが、1日睡眠を妨げられて徹夜するだけで、脳内のAβ量が高まるという恐ろしい論文が米国国立衛生研究所から米国アカデミー紀要にオンライン発表された。タイトルは「β-amyloid accumulation in the human brain after one night of sleep deprivation(一晩睡眠が妨げられると人間の脳内にβアミロイドが蓄積する)」だ。

研究では平均年齢40歳の20人の男女の脳内Aβ量を、Aβに結合するF18同位元素でラベルしたflorbetabenを用いてPETで測定している。PETを使えば、脳のどの場所に蓄積が見られるかわかる。測定は一回目は普通に寝た後、そしてもう一回目は夜10時から7時まで看護師さんの監視のもと一睡もできずに30時間起きていた後と、二回行われ、両方の画像を比較して、Aβが蓄積している場所を特定している。

驚くべき結果で、一晩徹夜するだけで、アルツハイマー病で障害される海馬、海馬傍回、そして視床の3領域でAβの蓄積が認められる。海馬では、右側でこの傾向が強い。この上昇は、一人を除いて19人全員に観察され、年齢、性別を問わない。また睡眠が妨げられて気むずかしくなる程度に応じて、蓄積が高い。なぜこれほど短い期間にAβの蓄積が検出できるのか、この結果だけから結論できないが、やはり睡眠により老廃物の排出が抑えられるからと考えるとつじつまが合う。

この研究でも、一般的なリスク要因としての、睡眠時間、APOEの血中濃度と相関してAβが蓄積する領域についても同じ被検者で調べている。面白いことに、日常の睡眠時間の長さに相関してAβが蓄積する場所は、被殻、海馬傍回、そして右の楔前部で、徹夜で蓄積する部位が違う。またもう一つのリスク要因のAPOEと相関するのはレンズ核、淡蒼球と、また違う場所が相関している。

結局、徹夜による蓄積部位と、他のリスク要因と相関するAβ蓄積領域のメカニズムが異なることは、単純に老廃物が排出できないことだけにアルツハイマー病の責任を負わせるわけにはいけないことを示している。

結論としては、徹夜は禁物で、長く寝るに越したことはないことになる。ただ、後の方は守れそうもない。
カテゴリ:論文ウォッチ