5月28日 オキザゾロンの意外な作用機序(5月17日号Cell掲載論文)
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5月28日 オキザゾロンの意外な作用機序(5月17日号Cell掲載論文)

2018年5月28日
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オキザゾロンといっても、化学者ならともかく、生物学者には馴染みのない化合物ではないだろうか。ところが古い世代の免疫学者にとっては、皮膚の接触性過敏症を研究する時、おそらく最もポピュラーな分子だった。私がお世話になっていた桂さんの教室は遅延性過敏症のメカニズムに力を入れていた時期があり、その時皮膚科から研究に来ていた高橋千恵さんがこの化合物をお腹に塗布して、免疫を誘導していたのを今でも鮮明に覚えている。同じオキザゾロンを食べさせて、腸の炎症を誘導する実験系があることも聞いていたが、接触性過敏症と特に変わることはないだろうとあまり深く考えたことはなかった。

オキザゾロンは若い時の思い出だが、オキザゾロンによる腸炎に、遅延型過敏症のようなT細胞によって媒介される抗原特異的反応だけではない、NKTを介する経路が重要な役割を演じているとする論文がハーバード大学から5月17日号のCellに発表され、その内容に驚いた。タイトルは「Dietary and Microbial Oxazoles Induce Intestinal Inflammation by Modulating Aryl Hydrocarbon Receptor Responses(食物や細菌由来のオキザゾールはAhr受容体を変化させて腸の炎症を誘導する)」だ。

この論文は少しわかりにくい。この理由は、研究が二つの流れからできているためで、一つはオキザゾロンによる腸炎のメカニズムで、もう一つはオキザゾロンと同じメカニズムで腸炎を誘発する食品や細菌由来の化合物の探索だ。論文の順序を無視して、まずオキザゾロンの腸炎誘導のメカニズムから説明しよう。

まず重要なことは、これまでの研究でオキザゾロンにより誘導される腸炎には、抗原特異的免疫システムに加えて、千葉大学免疫におられた谷口さんたちが発見されていたNKT細胞が関わることがわかっていた点だ(全く知らなかったが)。

この研究では、オキザゾロンが直接腸管上皮に働きかけて、NKTシステムを変調させるというモデルに基づき、オキザゾロンによって腸管上皮に誘導される遺伝子解析を手がかりに順番に反応経路をさかのぼり、オキザゾロンがまずトリプトファン代謝に関わるインドールアミンオキシゲナーゼに直接結合して活性を変化させ、トリプトファンからAhrと呼ばれる核内受容体のリガンドを合成する。このリガンドで活性化されたAhrにより、NKT細胞の刺激分子CD1dにリピッドリガンドをロードするMttpの発現が抑制され、NKTとの相互作用がおちる結果、炎症を抑えるIL-10の発現が低下して、炎症を悪化させるというシナリオを示している。話はかなりややこしい。 Ahrはダイオキシンにまで反応する核内受容体で、多様な作用を示すが、今回明らかになった腸炎の誘導カスケードは、オキザゾロンに特異的な反応らしく、なぜAhrでこの様な特異性がでるのかについては不明のままで、これも理解を複雑にしている。要するに、オキザゾロンでCD1dが上皮表面に提示されるのが抑制され、NKT1と上皮との相互作用が落ちると、炎症が上がるという直感に反するシナリオで分かりにくい。

さて、もう一つの流れは、腸炎を誘導する食品、農薬、そして腸内細菌にオキザゾロンとメカニズムを共有する分子があるかについてで、構造解析から、カビに対する農薬ビンクロゾリンをはじめ、いくつかの化合物を同定している。重要なことは、これら化合物が、食品や細菌に含まれる事で、今後上皮細胞モデルを用いた方法で、腸炎誘導の可能性を確かめていく必要があると思う。農薬はともかく、一般食品や、腸内細菌がこのような炎症誘導性分子を含んだり、作るとしたらこれは大変だ。医師も、この可能性を頭に置いて、今後診察する必要があるだろう。

以上、オキザゾロンもNKTも私達の世代には馴染みの現象だったが、その機能は予想とは全く違っていた点で面白かった。とはいえ、研究として入り口に立った所という感じで、まだまだ納得出来ないところが多い。またここまで複雑に考える必要があるのか、まだしっくり来ない。
カテゴリ:論文ウォッチ