6月16日:CLOVES症候群の治療法(Natureオンライン版掲載論文)
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6月16日:CLOVES症候群の治療法(Natureオンライン版掲載論文)

2018年6月16日
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CLOVES症候群は極めてまれな病気で、脂肪細胞の増殖、血管奇形、色素斑、側湾症などさまざまな症状が出てくる。特に進行する脂肪腫とリンパ管障害による浮腫のために一度見たら忘れることのない外観を示す。これまで大きくなった腫瘤を外科的に取り除く以外に治療法はなく、予後は悪い。

2012年この病気のメカニズムが明らかになり、PIK3CAと呼ばれる細胞増殖のマスター遺伝子が発生途上で活性化型突然変異を起こし、その細胞が異常増殖を起こして様々な症状が出ることが明らかになった。この結果、CLOVESは現在ではPROS(PIK3CA related overgrowth syndrome:IK3CAが関わる過剰増殖症候群)と呼ばれるようになった。

今日紹介するパリ大学を中心にフランスの研究機関が協力して発表した論文はPI3KCAを抑制する薬剤を開発し、CLOVES症候群の患者さん全例の治療に成功したという論文でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Targeted therapy in patients with PIK3CA related overgrowth syndrome (PIK3CAが関わる過剰増殖症候群の分子標的治療)」だ。

PIK3CAはガンでも変異がみられ、がんに対する標的薬として開発が進んでいた。この研究ではまずはCLOVESと同じ変異をマウスのPIK3CAに導入し、生まれてから一部の細胞で活性化型分子が発現するように操作してCLOVES症候群モデルマウスを作成し、このマウスをノバルティスがガンの標的薬として治験を進めているBYL719を用いて治療実験を行なっている。結果は、病気を発症させたマウス全例でほぼ病気を完治することができるという、赫赫たる戦果をあげることができた。

そこで次は、手の施しようがなくなり、予後数ヶ月と診断された2人の症例を第1/2相試験を行い、2例ともBYL719投与後急速に改善し、ほぼ症状が取れすでに1年半程度経過している。マウスの実験から、薬剤を止めると再発することがわかっており、患者さんはこの薬剤を続ける必要があるが、副作用は対応可能な高血糖以外ほとんどないという結果だ。

この結果を受けて、おそらくフランスの患者さん全員ではないだろうか、17人の患者さんに投与を始めている。皮膚に現れた色素斑や毛細血管増殖は全ての患者さんで消失し、腫瘤も縮小したおかげで、それまで痛み止めとして服用していたモルフィネを中止できている。他にの消化管出血は改善、あるいは血管異常による血栓の危険性も解消した。

これ以上詳しく述べても仕方ないだろう。1年半ぐらいの投与期間では副作用がなく、しかも効果は絶大だ。すでに認可が行われている薬剤だと思うので、世界中の患者さんの治療に使える日も近いと思う。重要なシグナル分子が活性化される病気はFOPをはじめとして多く発見されている。せっかく原因がわかっても、それから研究が進んでいないという状況が続いているが、今日紹介した論文は、同じようなことが他の病気でも十分起こりうることを示す医学の勝利だと言える。
カテゴリ:論文ウォッチ