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7月10日 メトフォルミンは肺線維症に効果がある(Nature Medicineオンライン掲載論文)

2018年7月10日
メトフォルミンは肝臓でのグルコース産生を低下させる効果があり、ほとんどの国で、糖尿病治療の第一選択薬になっている。この効果のメカニズムの中心は、肝臓細胞のAMPKを活性化し、ミトコンドリアのさまざまな活動に影響するためと考えられているが、実際にはその全体像は複雑で完全に理解できているわけではない。最近では腸内細菌にメトフォルミンが直接働いて、インシュリン抵抗性を改善するとする論文も発表されている。その上、糖尿病に限らず、免疫系を活性化して抗がん作用を示すという報告もあり、アスピリンに並んで、多様なしかも良い作用を持つことが証明されている。

最近になってなんと肺線維症にもメトフォルミンが効果を示すことが示され、まさにアスピリンに並ぶ万能薬としての地位を高めつつある。今日紹介するアラバマ大学からの論文は、メトフォルミンの肺線維症に対する効果のメカニズムについての研究でNature Medicineのオンライン版に掲載された。日曜日にアスピリンの多様な効果を紹介したので、今日はこれに続く形でメトフォルミンについて紹介することにした。

この研究では、ヒトやマウスの肺線維症とAMPKシグナル分子の関係を調べ、AMPKが活性化されると肺線維症へのシグナルが入った線維芽細胞のオートファジーを高め、mTORシグナルを抑えることで、コラーゲンなどの蓄積を抑えることを明らかにしている。逆にAMPKの発現を抑えると、線維芽細胞での細胞外マトリックス分子の発現が高まる。

次に、AMPKの機能を高める化合物AICAR やメトフォルミンで細胞を処理する実験を行い、これらのAMPK活性化分子がコラーゲンやファイブロネクチンの合成を止め、オートファジーを誘導することがわかった。

以上の結果から、肺線維症はTGFβなどの刺激が、細胞がオートファジー能力を低下させ、細胞外マトリックスが沈着することが原因となっておこるが、メトフォルミンによりミトコンドリアの合成が高まり、線維芽細胞の細胞死が高まることで、肺線維症を止めることが出来ることが明らかになった。

最後に、この細胞レベルの結果が、生体内でも見られるか調べる目的で、ブレオマイシンと呼ばれる抗がん剤を投与して肺線維症を誘発し、これにメトフォルミンを投与して病気の進行を調べている。結果は期待通りメトフォルミン投与で、肺線維症に関わる分子マーカーの発現が抑えられ、組織学的にも線維化を強く抑えることができている。

これらは全てマウスの話だが、メトフォルミンは最も使いやすい薬剤としてこれまで多くの人に使われてきたこと、またきわめて安価な薬剤である事を考えると、大至急治験を行い、ヒトの肺線維症にも効果があるか確かめてほしいと思う。
カテゴリ:論文ウォッチ
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