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7月15日:老化細胞を除去すれば「元気で長いき」できるか?(Nature Medicineオンライン版掲載論文)

2018年7月15日
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社会が健全であるためには、常に新陳代謝が必要で、若い人が活躍するには、年寄りが引退する仕組みが必要だ。これは身体も同じようで、2015年3月、老化した細胞を除去することで、身体機能を上げることができることを報告した論文を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/3057)。

今日紹介するメーヨークリニックからの論文は、この研究の続きで、前の論文で開発した薬剤が、身体の機能を若返らせるだけでなく、寿命を延ばす効果まで証明した研究でNature Medicineオンライン版に掲載された。タイトルは「Senolytics improve physical function and increase lifespan in old age (老化細胞融解剤は老化マウスの身体機能を改善し、寿命を延ばす)」だ。

以前の研究を思い出すと、老化した細胞が生存するメカニズムを追求し、多くのキナーゼに阻害効果があるダサニティブと、抗炎症効果があると一般薬として普及しているクエルセチンの組み合わせが、老化細胞を除去する効果があることを発見し、この薬剤投与により実際老化マウスの心臓機能が改善することを示した論文だった。

今回の論文では、老化細胞が全身に及ぼす効果、そしてダサニティブ+クエルセチン(D+Q)の寿命延長効果を明らかにすることが目的になっている。

まず老化細胞の身体に及ぼす影響を調べる実験系として、体外に取り出した前脂肪細胞に放射線照射により老化を誘導し、この細胞を若いマウスの腹腔内に移植して老化が起こるか調べている。ちょっと驚くべき実験系だが、なんとたった100万個の放射線照射した細胞を移植するだけで、歩く速度が低下し、バーにぶら下がるグリップ力が低下する。さらに、老化が始まったマウスに同じ細胞を移植した場合でも、身体機能がさらに低下するだけでなく、驚くなかれ死亡時期が早まる。

移植により、炎症状態が誘導され、また様々な代謝ストレスへの抵抗性が失われるが、これは移植した脂肪細胞への免疫反応でないことは、免疫不全マウスへの移植で確認している。と言っても、自然免疫系については検討できていない。

最後に、放射線照射脂肪細胞の移植による老化を以前の研究で特定したD+Qが止めることを確認した上で、比較的寿命の長い方のB6マウスが20ヶ月齢に達してから、D+Qを2週間に一回投与を続けると、平均で寿命が60日延長(このマウスの平均寿命は930日なので、6%延長と考えていい)、様々な病気になる確率が減り、身体機能もある程度改善するという結果だ。これがマウスだけの話でないことを示すため、ヒトの腹腔内の脂肪組織を用いてD+Qが老化細胞を除去できていることを示している。

以上が結果で、中年以上になれば2週間に一回間欠的にD+Qを投与すると、元気で長生きできるかもしれないという結論だ。おそらく、かなりの高齢者を対象に治験を計画しているように思うが、ダサニティブが抗がん剤として使われており、ある程度の副作用が予想されると思うと、間欠的に投与すると言っても、二の足を踏む人が多いのでは無いだろうか。少数の老化細胞を局所に移植するだけで、全身の効果があることも含めて面白い研究だが、私自身がヒトでの効果を知るまでいきていられる可能性は低いと思う。
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