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10月4日:母親の自覚症状から死産を早期発見できるか?(The Lancetオンライン版掲載論文)

2018年10月4日
多くの先進国で少子化は重要な問題になっている。このために最初に考えられる取り組みが、世界で260万人発生する死産を減らすことだが、このためには死産の前兆をキャッチし、対応する必要がある。これまでヨーロッパでは、早期診断の方法として、妊婦さんの自覚症状が使えるのではと、研究が進んで来た。すなわち、妊娠後期の子供の胎動の変化を、自覚的にいち早くキャッチして、医師にできるだけ早く相談し、必要なら帝王切開などで早期に出産させる体制を確立し、これにより死産を減らすという戦略だ。

今日紹介する英国医学研究協議会のトミーセンターを中心とする、全英国を巻き込んだ治験研究は、なんとお母さんに胎動に気をつけてもらって、変化があれば医師に早期に相談するというパッケージが、本当に効果があるのか調べた研究で、The Lancetオンライン版に掲載された。タイトルは「Awareness of fetal movements and care package to reduce fetal mortality (AFFIRM): a stepped wedge, cluster-randomised trial (胎動の認識と子供の死産を低下させるケア・パッケージ(AFFIRM):クラスターレベルで無作為化したステップウェッジデザイン治験)だ。

要するにお母さんに胎児の異常を早期に気づいてもらう必要があり、この研究ではノルウェーで開発されたお母さんの教育プログラムを用いて、これを行っている。具体的には、参加した連合王国33箇所の出産施設を、無作為に教育群と、教育をしない群にわけ、教育する群に選ばれた施設では、出産に関わる医療従事者の教育とともに、妊婦さん自体もどのように胎児の動きの異常を感知するかについてトレーニングする。その後妊娠期間を追跡し、教育プログラムを受けることで死産が減るかどうかを調べている。

さすが英国で、総勢で40万人の妊婦さんが治験に参加している。結果だが、結局死産の数や、低体重児の発生でみると、教育プログラムを受ける効果はほとんど認められないという結論になった。その上で、帝王切開数や陣痛誘導処置の数は10%ほど上昇するし、入院日数も増える。当然、教育プログラムを用意して、それを受けてもらうことにも多くのコストがかかる。まだ進行中の治験もあるらしいので、これらの結果が出てくるまで最終判断はないとは思うが、政策的にはおそらくこのプログラムは中止ということになるように思う。

お腹の中の胎児の動きと聞くと、確かに利用価値が高そうに思えるが、結論としては「そんなことを気にせず、おおらかに妊娠期間を過ごしてください」ということになるのだろう。我が国のお母さんにも、小さな変化に一喜一憂する必要はないことは伝えられるような気がする。

しかし、この研究結果は妊婦さんに伝えるために行われたものではない。死産を防ぐ決め手は見つからず、残念な結果に終わったが、少子化を少しでも食い止めようと医療界全体で、可能性を科学的に検証し、その結果を見て政策を決める英国NHSの徹底性だ。このことを知るだけでも、この研究の意義は大きい。
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