過去記事一覧
AASJホームページ > 2018年 > 11月 > 2日

11月2日人類はいつからチョコレートを食べているのか(Nature Ecology & Evolutionオンライン版掲載論文)

2018年11月2日
少し専門的な論文が続いたので、ちょっと息抜きと思っていたら、うってつけの論文を見つけた。人類がチョコレートの原料カカオ豆をいつから栽培植物として利用し始めたのかという問題についての論文だ。しかしアフリカ由来のコーヒに南米由来のチョコレートは息抜きになる。

これまでカカオTheobroma cacaoの栽培は中米で始まったとされていたが、最近ゲノム研究が進み、遺伝的に大きな変化、すなわち栽培化がアマゾン上流で始まったのではないかという可能性が示唆されていた。今日紹介するカナダアルベルタ大学考古学教室からの論文は、少なくとも5450−5300年前には、エクアドルでカカオがすでに栽培されていることを示した研究で、アマゾン源流でカカオの栽培植物化が始まったとする説を支持する論文だ。タイトルは「The use and domestication of Theobroma cacao during the mid-Holocene in the upper Amazon (カカオの利用と栽培は完新世中期、アマゾン上流で起こった)」だ。

この研究の手法は単純で、2002年にフランスとエクアドルの合同チームにより発見され、放射線同位元素の年代測定から5300年前と年代特定できたマヨチンチべ文明の最古の遺跡(エクアドル)から見つかった陶器にカカオの痕跡がないか3種類の方法で調べ、すべての方法で栽培植物化されたカカオと考えられる残滓を特定できたという話だ。この遺跡は、当時の陶器の生産所として機能しており、複雑な形のツボまで様々な陶器が見つかっている。

具体的には、陶器にこびりついている煤けた食物残渣を19種類の道具から採取、その中の6種類の陶器から現在のカカオに似たデンプンが回収された。これらは野生種のカカオとは区別される。

次にこれを液体クロマトと質量分析器で調べ、カカオ由来のTheobromineを検出している。

最後に残渣のDNAを回収し、配列から栽培化された他のカカオや野生のカカオのDNAと比べている。カカオのDNAをトラップして濃縮する方法により得られた5種類のDNAサンプルのほとんどが栽培化されたカカオの配列由来で、野生型のDNAが混じっていたのは2種類だけで、それもほんの一部で、全て栽培化されたカカオを代表していることが明らかになった。また、他の栽培かカカオとの関係では、アマゾン上流のプルス川、エクアドルのクラレー川のカカオに、エクアドルで栽培されているチンチぺ種より近いこともわかった。以上のことから、この遺跡で食べられていたカカオはすでに栽培化されたカカオに近いことから、おそらくここにたどり着く前に栽培化が行われたのではと結論している。たかだか19種類の多型を用いた系統解析で、これだけで完全にカカオ栽培の歴史をたどるのは難しいが、、アマゾン上流のエクアドルで最初栽培化され、それが中米からメキシコで独自に新しい種に改良されたとする考えを示している。

もちろん、塩基配列の一致を見たからといって、実際にこびりついいていたサンプルが、当時のものかどうかはわからない。あとからつく可能性も十分ある。これについては、回収したDNAに5000年分の変性が起こっていることを示して、確かに後から混入したものでないことが示されている。ただ、この点については問題にする研究者も多い気がする。まあ、ここでは一応著者の結論を受け入れよう。

しかし、コーヒーといい、カカオといい、人類は結構苦いものをわざわざ栽培化して利用していたことになるが、実際その時から、これほど美味しい食べ物として発展すると考えていたのだろうか。その予見能力には脱帽する。
カテゴリ:論文ウォッチ
2018年11月
« 10月    
 1234
567891011
12131415161718
19202122232425
2627282930