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12月14日 ガン免疫の初期に効果を発揮する抗NKG2A抗体(12月13日号Cell掲載論文)

2018年12月14日
本庶先生のノーベル賞受賞特集の最後は、ガン免疫の新しいチェックポイントに関する研究を紹介する。

ガン免疫と一口に言っても、実際には数多くの過程の集まりで、全体を頭に入れて考えることが重要だ。まず最初はガン特異的抗原が免疫系に利用できる形でガンから提供される必要がある。この時ガン抗原はガン細胞に直接提示される場合もあり、また樹状細胞により抗原が提示される場合もあるが、後者の場合成熟した樹状細胞がガン組織に集まってくる必要がある。こうして提示された抗原によってT細胞が刺激されるが、ここでアジュバントなどを持ちいると、自然免疫の活性化が起こって、より強い免疫のブーストがかかる。ここで刺激を受けたリンパ球の一部は、次に所属リンパ節に移って記憶細胞として分化し、例えば転移巣など原発とは異なるガン組織にも移動してガンを殺す。今回ノーベル賞に輝いたチェックポイントは、この長い過程の比較的後期に起こってくるリンパ球の疲弊を防ぐ役割を持つ分子だが。しかし、治療標的はこの長い過程のすべての段階に存在する。

今日紹介する論文も昨日と同じで、オランダからの研究でより初期のガン抗原で免疫された時点でのチェックポイントについての研究で12月13日号のCellに掲載された。タイトルは「NKG2A Blockade Potentiates CD8 T Cell Immunity Induced by Cancer Vaccines (NKG2Aの阻害は、ガンワクチンにより誘導されるCD8T細胞の免疫を高める)」だ。同じ号に、他のグループからの同じ方向性の論文が発表されており、結果もだいぶ違うのだが、こちらの方が優れていると思ったので、ライデン大学の論文を紹介することにした。

この研究の発端は、ガンがHLA-Eと呼ばれるマイナー組織適合抗原を発現し、またCD8T細胞が、HLA-Eに結合するNKG2Aを発現しているガン患者さんの予後が悪いという発見だ。全く、PD-1とPD-L1のチェックポイントコンビと同じだ。このもう一つのチェックポイントは、これまでNK細胞のチェックポイントに関わると考えられてきたが、この研究ではガン組織で免疫刺激が起こるときに、CD8キラー細胞を特異的に抑えるための機能が最も重要であることを示している。しかも、NKG2A陽性細胞の殆どがガン組織で育ってきたことを示すCD103を発現し、免疫されたあとまだ時間が経っていない細胞であることもわかった。

そこで、ガンのワクチンの研究に使われるモデルマウスで、ガンを移植してからワクチンによる免疫を行うと、腫瘍組織のCD8T細胞のNKG2A発現が高まり、キラー活性が抑えられることが明らかになった。すなわち、免疫初期に働く重要なチェックポイントであることがわかった。また、ガンの方のHLA-Eは炎症によって誘導されることも明らかになった。

そこで、NKG2Aに対する抗体を用いて 、ワクチンの効果が高まるかを調べると、比較的免疫の後期に作用するPD-1抗体では全く効果がないのに、NKG2A抗体は根治はできないが、ガンの増殖を強く抑えることができることを明らかにしている。

結果は以上だが、今後ガンに対するワクチンの重要性が高まることを考えると、この発見は重要だと思う。NKG2Aについてはすでにヒト化した抗体が利用されているようだし、HLA-Eに対しても抗体療法の治験が始まっているようだ。これらの治験と、今回の発見は無関係に行われているが、安全性などがわかった上で、ガンの免疫が成立する過程で使える抗体として期待できると思う。
カテゴリ:論文ウォッチ
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