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3月3日 大麻成分を出芽酵母の中で合成させる(Natureオンライン版掲載論文)

2019年3月3日

2015年酵母を使ってモルヒネを合成するための中間体レチクリンを酵母に作らせることに成功したカリフォルニア大学バークレイ校の研究を紹介した(http://aasj.jp/news/watch/3463)。また、レチクリンからコデインまではやはり酵母で作らせることができる。とすると、発酵技術を用いて麻薬を作ることが実際の視野に入ってきて、倫理的にも、社会的にもどう規制するのかを真剣に検討する必要があると思った。

我が国では大麻を栽培したり所持したりすることは違法だが、最近は医療用に限らず大麻の使用を解禁する国が出てきており、今日紹介するカリフォルニア大学バークレイ校からの論文(2015年に紹介したのとは同じグループではない)将来も社会的問題にはならないと思うが、今度は大麻カンナビノイドの主成分であるテトラヒドロカンナビノール(THCA)やカンナビディオリック酸(CBDA)を、単純な糖から作ることができる酵母を遺伝子工学的に作るのに成功したという研究だ。タイトルは「Complete biosynthesis of cannabinoids and their unnatural analogues in yeast(大麻成分とその自然にはない類自体を酵母で完全合成する)」だ。

大麻草でカンナビノイドは、糖から合成されたアセチルCoAがメバロン酸経路を通って造られるGPPとマロニルCoAやヘキサノイルCoAを通って合成されるOlivetolic acid(OA)が結合して合成される。基本的には脂肪酸合成経路の一つとみていい。この研究では、まず酵母にOAを合成させる一群の酵素を再構成し、ガラクトースがあれば1リットル中に1.6mgのOAを合成する酵母を作成する。一方で、この酵母のメバロン酸合成経路が促進した酵母株を作り、糖があればOAとGPPが合成される酵母株を作っている。

次は、この酵母がカンナビノイド前駆体を作るための酵素を再構成し、最終的にyCAN43と名付けた、なんとかカンナビノイドを合成する酵母株に到達している。あとは、この株の合成経路の効率を確かめ、遺伝子の量を増やしたりなどを書く経路で繰り返し、yCAN53という株ではTHCAが1リットル当たり8mg合成できる。

書いてしまうと簡単だが、再構成する酵素の細胞内局在にまで操作を加えて、ようやくここまで到達したという大変な話だ。おそらくこの段階から、より高い効率でカンナビノイドが合成される条件や細胞株が改良されると思う。この研究で最も重要なのは、最初の原料を変えると同じ酵母株が自然には存在しない様々なカンナビノイドを合成する点で、これらの薬理活性を調べることで、現在の大麻成分よりはるかに優れた鎮痛剤や、抗てんかん薬が開発できるのではと期待している。

以上が結果で、より自然のカンナビノイドを作れるという点では高く評価できる論文だ。しかし、同じ方向の研究は、今後私たちが麻薬として取り締まっている多くの物質を酵母で作らせる可能性を開くのではと想像する。そろそろ真面目に社会としての対策を考えても良さそうだ。

カテゴリ:論文ウォッチ
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