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5月6日 白血球から漏れ出したヒストンH4が動脈硬化の引き金を引く(Natureオンライン版掲載論文)

2019年5月6日

動脈硬化を一種の炎症として捉えることが20世紀後半から行われるようになったが、細菌感染とは違うので、なぜ自分の組織の破壊という炎症のシグナルが動脈硬化で発生するのかよくわかっていない。

今日紹介するミュンヘン・ルードビッヒ・マクシミリアン大学からの論文は、この問題にチャレンジし、好中球のヒストンH4がその引き金であることを突き止めた研究でNatureオンライン版に掲載された。タイトルは「Externalized histone H4 orchestrates chronic inflammation by inducing lytic cell death(細胞外のヒストンH4が細胞を融解して炎症を組織化する)」だ。

この研究では、動脈硬化のプラーク内で細胞死が急速に起こって、プラークが不安定になる現象に着目し、この現象と関係する細胞浸潤をまず探索している。その結果、好中球がプラークの不安定性、および血管平滑筋の細胞死と強く関わることを確認する。次にモデルマウスを用いて、好中球数を減らす操作をすると、これを防止できること、逆に白血球が集まるように操作すると、悪化させることを示している。

以上の結果から、好中球と血管平滑筋との相互作用が動脈硬化の引き金になると仮説を立て、平滑筋に好中球を集めるメカニズムについて調べ、活性化された平滑筋が出すCCL7が好中球を集め、そこに好中球がトラップされることが平滑筋の細胞死を誘導することを明らかにしている。

この細胞学的な確認実験の後、ではなぜ好中球が集まると平滑筋の細胞死が誘導されるのかについて、好中球の集合に分泌される分子に対する抗体を用いて細胞死を抑制する実験を行い、なんとヒストンH4に対する抗体が、平滑筋の細胞死を防ぎ、プラークの安定性を高めることを発見する。

この発見が研究のハイライトで、圧巻はリコンビナントのヒストンH4を加えるだけで平滑筋細胞が障害されること、またこれにはヒストンH4の強い陽イオン性が陰イオンの膜と相互作用を起こすことが問題で、細胞表面の陰イオン性をオレイルアミンで抑えると細胞毒性は減じ、またコレステロール硫酸で処理すると障害性が高まることを示している。

そして原子間顕微鏡を用いてヒストンH4で処理した平滑筋膜には穴が空いており、これが細胞融解を誘導することを突き止める。最後に、ヒストンH4のこの穴を開ける作用の中心として働くN末端が細胞膜と接触するのを抑制するペプチドを特定し、これを注射すると平滑筋の細胞死が防げ、動脈硬化巣も安定化することを示している。

全く予想外のメカニズムで驚くが、これが正しいとすると、好中球だけでなく細胞が破壊されヒストンH4が漏れ出てきたら全て炎症の巣になるように思えるが、おそらく好中球にはH4をうまく使う能力がもともと備わっているのかもしれない。好中球特異的だとしても、動脈硬化以外でも同じようなことが起こるのか研究が進むのを期待する。

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