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5月19日 加工食品の影響を調べる臨床治験(Cell Metabolismオンライン版掲載論文)

2019年5月19日

ハンバーガーに代表される食べやすく加工した食品は、先進国での肥満の原因として問題にされている。事実以前紹介したように、ファストフードに限れば一品当たりのカロリーや砂糖の量は上がり続けており、消費者の好みを追求し続ける大手ファストフード会社の宿命が明らかになっている(http://aasj.jp/news/watch/9804)。ただいくら一品のカロリーが高いとはいえ、食べやすく加工したこと自体が悪いのかどうか、またなぜ悪いのかについては科学的な答えがない。

今日紹介する米国NIHからの論文は、食べやすくすることが問題になる原因を4週間被験者の食事をコントロールして調べた臨床治験でCell Metabolismにオンライン掲載された。タイトルは「Ultra-Processed Diets Cause Excess Calorie Intake and Weight Gain: An Inpatient Randomized Controlled Trial of Ad Libitum Food Intake(高度に加工した食品はカロリー摂取による肥満の原因となる:食事制限なしの院内での無作為化試験)」だ。

研究は極めてシンプルで、男10人、女10人の健常人を入院させ、無作為化して、10人は、最初2週間高度に加工した食品だけ、残りの2週間はほとんど加工食品を使わない食事、残りの10人はその逆パターンの食事を取ってもらい、その間の徹底的に様々な代謝指標を徹底的に調べ上げている。

この研究の目的は、加工して食べやすくすることの功罪を調べることなので、入院中の食事は加工食も、非加工食も、重さあたりの様々な成分はほぼ同じように合わせている。しかし、食べる量は自由にしており、当然たくさん食べればカロリーは高い。また入院中は両方のグループとも決まった一定の運動をとるようにしている。

さて結果だが、期待どおり食べやすく加工した食品を摂取している間は、摂取カロリーは上昇し、体重が増える。一方、加工しない食品をとると体重は低下するという結果だ。食品の内容は同じなので、結局食べやすく加工してあれば、ついつい多く食べてしまって体重が増えるということになる。これ以外に面白いと思った結果をまとめると、

  • 脂肪や糖質の摂取は、加工食でも上昇するのに、タンパク質の摂取は両群で変化がない。メニューにもよると思うが、なぜタンパク質だけ一定レベルになるよう自然に食事できるのか不思議だ。
  • カロリー過多になる原因は、朝食と昼食で、夕食は両群とも摂取カロリーは変化しない。すなわち、朝、昼に注意が必要。
  • 期待どおり、加工食の場合、食べる速度が上がる。カロリー比にすると1分あたりの摂取カロリーは50%上昇する。要するに、加工食品も噛めるようにすればいい。
  • 加工食では食欲を抑えるホルモンの分泌が少なく、逆に空腹ホルモンが高い。すなわち、満足までに多く食べてしまう。
  • 少なくともアメリカ人は、耐糖試験で両者に差がない。

他にも詳しい代謝試験が行われているが、詳細については是非論文を直接当たって欲しい。結論を繰り返すと、食べやすくすることで飽食の時代が来たという当然の結論だが、それを調べるためにこれほど大掛かりな治験を行うNIHに頭がさがる。

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