過去記事一覧
AASJホームページ > 2019年 > 5月 > 25日

5月25日 スマフォを用いた子供の中耳炎の家庭診断(5月15日号Science Translational Medicin掲載論文)

2019年5月25日

現在のスマフォはコンピューターとしての機能だけでなく、様々なセンサーを備えたハイテク機器で、このポテンシャルを使って家庭で病気を診断するシステムの開発が進んでいる。例えばカメラとモニターを利用した眼底検査機、外耳道モニターは一般家庭でも使える機器が市販されているし、外部センサーを使えば超音波診断にすら利用できる。これに拍車をかけているのが機械学習の進展で、画像の自動診断が可能になると、専門家の目が必要なくなる。

今日紹介するワシントン大学からの論文はスマフォのスピーカーとマイクロフォンを用いて中耳炎で生じる中耳の浸出液を家庭で診断できるようにするシステムの開発で5月15日号のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Detecting middle ear fluid using smartphones(中耳の浸出液をスマートフォンで検出する)」だ。

子供の中耳炎には熱や痛みを伴う急性中耳炎と、滲出性中耳炎があり、後者は症状が少ないため異常に気づかず、言葉が遅れたり、学校の成績が低下したりすることがある。これまでも、先に述べたスマフォを用いた耳鏡で診断する試みも行われているが、専門家の目が必要で、家庭でというのは難しい。

この研究では自宅でハサミで切り出した漏斗状の集音装置を、下面にスピーカーとマイクロフォンが相接して設置されているスマフォ(ほとんどのスマフォがこの形式)に設置して、スピーカーから1.8-4.4KHzの短い音波を出し、その音波が鼓膜と共振、反射して戻ってきた時の音をマイクで記録すると、戻ってきたエコーが発信している音と重なって、一種のノイズキャンセリングが起こって音の強さが低下する現象がおこり、このパターンが中耳に浸出液がある時変化することを示し、これを用いて簡単に家庭内で中耳の滲出液の存在を9割以上の確率で診断できることを示している。

あとは漏斗を作る紙質、臨床医と一般人による測定、スマフォの種類、など様々な条件を変えて診断率と特異性を調べ、十分家庭での診断が可能であることを証明している。

詳細はほとんど省いて紹介したが、アプリだけスマフォに入れればあとは他の装置を全く必要としないという点で、実現性が極めて高いと思う。

国が音頭をとって、AIの専門家を25万人育成するという話が進んでいると思うが、我が国がこの分野で大きな遅れをとっているのは、電子産業の地盤沈下と、様々な分野での対話がうまくいかないため、私たちが毎日生きることで大量に生まれているビッグデータを、民間や個人からの自由な発想で掘り起こせていないからではないかと思っている。例えば米国NIHではスマフォを医師や研究者にどう生かすのかを教えるコースを設けている。

我が国も掛け声ではなく、AI初歩教育とは何かを国も明確に示すことが重要ではないだろうか。

カテゴリ:論文ウォッチ
2019年5月
« 4月   6月 »
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
2728293031