過去記事一覧
AASJホームページ > 2019年 > 10月 > 10日

犬を飼っている方が心筋梗塞からの回復が良いことがほぼ証明された(2019.10.10)

2019年10月10日

(紹介論文 Circulation: Cardiovascular Quaity Outcome 12:e005342. 掲載論文)

様々な病気の患者さんにとってペットが孤独を癒し、心の支えになることで病気の回復を助けることが知られている。例えば、血圧ですらペットと一緒に暮らしていると下がるという報告もある。これらを受けて、米国の心臓病学会では2013年、ペットを飼うことは心臓病の予防や治療に役に立つ可能性を述べているぐらいだ。ただこの可能性を大規模調査で確かめた研究はなかった。

今日紹介したいのは、スウェーデン・ウプサラ大学からの論文で、スウェーデンの疾患レジストレーションから心筋梗塞や狭心症の発作を起こした患者さんを抜き出し、予後を調べるときに犬を飼っているか、飼っていないかの2群に分けて、犬を飼うことの効果を調べている。論文はCirculationのCardiovascular Quality and Outcomes に掲載され、タイトルは「Dog Ownership and Survival After a Major Cardiovascular Event(重大な心臓発作後の生存に犬を飼うことの影響)」だ。

国の疾患レジストレーションなので数は多く、心筋梗塞が18万人、虚血性発作が15万人で、それぞれ5.7%、4.8%が犬の飼い主と特定されている(私の予想よりは低い感じだ)。

結果はいずれの心臓発作でも、発作後の死亡のリスクが犬を飼っている方が優位に低下している。特に、一人暮らしの患者さんの場合危険度(hazard ratio)が心筋梗塞で0.67、虚血性発作で0.73とかなり低下している。

おそらく犬に限らないとは思うが、ペットと暮らすことの心の安らぎ、あるいは散歩などの運動は、心臓発作からの回復を助けることは確かなようだ。

10月10日 パーキンソン病の自宅エアロビクス治療(The Lancetオンライン版掲載論文)

2019年10月10日

最近治験論文をほとんど紹介していない事に気がついた。多くの論文に目を通しているのだが、医師には重要な情報でも、患者さんや一般の方にとっては、あまり大きな効果と見えないような結果が多かったためだと思う。

今日紹介する論文も効果としては手放しで喜ぶほどではないが、実際に患者さんにとっても治療を自分でコントロールできるという点で重要だと思って取り上げる事にした。オランダのRadboud大学神経学部門を中心とするオランダチームの論文で、軽度の(ホーン・ヤール分類II度)パーキンソン患者さんの運動機能低下を自宅でのサイクリングマシーンを基盤としたエアロビクスによってある程度防げることを示した臨床治験でThe Lancetにオンライン掲載されている。タイトルは「Effectiveness of home-based and remotely supervised aerobic exercise in Parkinson’s disease: a double-blind, randomised controlled trial (自宅での運動を病院からモニターできるエアロビクスプログラムのパーキンソン病に対する効果:無作為化対照研究)」だ。

研究は厳密に行われているが、実に単純だ。このセンターの外来に通うホーン・ヤール分類II度(手足の震えや筋肉のこわばりがみられ、生活に不便を感じ始める時期)の139人を無作為に2群に分け、対照群ではストレッチ、柔軟体操、リラックゼーション体操などから、エアロビクス要素を取り除いたものを1日30分、最低週3回続けるよう指導する。一方、エアロビクス群ではサイクルマシーンを用いて最初最大心拍数の50−70%を目安に運動負荷をかけ、その後慣れれば80%まで徐々に高める有酸素運動を、やはり1日30分(前後15分クーリング)、週3回続けるように指導する。

両軍共運動についてはモニターが行われ、病院に結果が直接送られるようになっている。

結果については運動開始後6ヶ月後に、ドーパミンがオフの時期にMDS-UDPRSと呼ばれる基準を用いて検査している。

さて結果だが、MDS-UPDRSの運動検査では、エアロビクスを加えた群では進行が止まっているが、加えない群では明らかに進行している。また、心血管系の運動への適応を調べると、やはりエアロビクス群では改善が見られるが、対照群では低下しており、有意な差であることが統計的に確認されている。

他の検査や、ドーパミンオンの時の検査では両群にほとんどは見られないが、総じてエアロビクス群では改善率が高い。

副作用といっても難しいが、運動中の事故についてはやはりエアロビ群のほうが倍高い。ただ、中程度で深刻な事故についてはどちらのグループでも1例見られたという結果だ。

残念ながら、もっと長期の調査はないのでこのまま進行が止まるかどうか明らかでないし、III度でも同じ結果が得られるのかは今後の研究が必要だ。しかし、これまでも同じような結果が、インストラクターの指導によるエアロビクスを続けることで得られるという結果が報告されており、わが国でも簡単に利用できるプログラムなので、是非普及してほしいと思う。

カテゴリ:論文ウォッチ
2019年10月
« 9月    
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031