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 新刊書 「創薬が危ない」講談社ブルーバックス 水島 徹 著 

2015年6月2日

「創薬が危ない」 水島 徹 著

   http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062579032

 

些か過激なタイトルであるが、著者の多彩且つ華麗な創薬科学界におけるキャリヤ(東大薬卒旧山之内製薬研究員、九大と岡大を経て熊大薬教授の後、現在慶応大薬教授とLLTバイオファーマ㈱会長とを併任)に基づいての創薬の意義、推進過程、問題点など現状を、自身の経験を交えて具体的且つわかり易く書かれている。一般的な医薬品の研究開発の方法や評価法については多数の専門書として、また代表的な日本発の医薬品では当事者等によりそれぞれのR&Dの逸話が論文や成書になっているが、門外の者にとっては、何れも真面目過ぎて難解で面白くない。その点本書は、手軽な創薬入門の教科書としてもよく出来ている。

ただ、現在の創薬活動停滞の打開策として、既承認薬についての、最新の研究手法を用いるとしても、適用拡大の延長(「ドラッグ・リポジショニング」と言っている)に拠っているのは、本書のタイトルからイノベーティブな手法によるアンメット・ニーズを満たす革新的医薬品の創出方法を期待すると少しガッカリかも知れない。

しかし、著者も指摘するようにドラッグ・リポジショニングによる創薬は、先人の功績を生かして、有効性や安全性の評価が速やかにでき、早期且つ安価に患者への投与が可能となるので、これぞ小児期に発症し進行性で、日々症状の悪化と先の不安に慄くにも拘らず治療法や薬物が無い、多くの遺伝性稀少難病の治療薬の創出にこそ活用されるべきである。

今春発足した日本医療研究開発機構(AMED)には大いに期待するし、その支援の最重点対象テーマとして、本手法による稀少難病治療薬の創出を優先的、速やかに取り上げて欲しい。   (田中邦大)