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気になる治験研究 3 心房細動と診断されたらアルコールをやめた方がいい

2020年1月10日
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心房細動は高齢化に伴って増加している。私の年になると、周りにも心房細動と診断された人をよくみかける。しかし、少し医学知識があるからと相談されても、「脳梗塞のリスク要因なので、まず専門医に診てもらって、必要ならカテーテルで不整脈の巣をアブレーションしてもらう」よう勧める以外、専門家でない私には答えようがない。

しかしこんな私でも、気の利いたアドバイスができるネタがオーストラリアのアルフレッド病院からThe New England Journal of Medicineに発表された。

この研究では、心房細動にアルコールの量を減らすことは効果があるかを調べている。実際には、だいたいワインにしてグラス一杯以上、毎日飲んでいる心房細動の患者さんを無作為に2群にわけ、禁酒群では一週間に2杯までに制限してもらう。コントロールはこれまで通りで制限しない。

禁酒を伴う治験というのは難しいようで、最初700人近くの患者さんに声をかけているが、500人以上が禁酒が必要と聞いただけで参加をやめている。最終的に禁酒してもいいと参加してくれた人は140人に減ってしまったが、治験参加者は決められた生活を半年続けている。

結果は期待通りで、半年の経過観察中に再発した率が、これまで通り飲み続けている人たちで73%に対し、禁酒群では53%に低下している。また、経過中に入院が必要になった患者さんがコントロールでは20%に対し、9%と半減している。すなわち、禁酒すれば心房細動は良くなる。

これまでアルコールは心臓に対する刺激性があるとされてきたが、この結果がそれを反映しているかどうかはよくわからない。いずれにせよ、心房細動と診断されたら、アルコールは控えたほうがいいようだ。

これからはこのネタをアドバイスに使うことにするが、私はおそらく治験に参加しなかった500人と同じで、禁酒を考えること自体が心臓に悪い。

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