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1月14日:アロマターゼ阻害剤による閉経後の乳がん予防(The Lancet online版記事)

2014年1月15日
これまで、多くの乳がんでは女性ホルモンのエストロジェンが増殖のモーターとなっている事を紹介して来た。エストロジェンの作用を止めるために、エストロジェン受容体とホルモンの結合を阻害する薬剤(例えばタモキシフェン)が用いられるが、閉経後や卵巣摘出を行った女性では男性ホルモンがエストロジェンに代わる代謝過程を阻害する薬剤が用いられる。これがアロマターゼ阻害剤だ。今日紹介する論文は、このアロマターゼ阻害剤を乳がん発症後ではなく、乳がんの予防に使えないかを確かめた国際的大規模治験の結果についての論文で18カ国149もの施設が参加している。タイトルは「Anastrozole for prevention of breast cancer high-risk postmenopausal women (IBIS-II):an international double blind, randomized placebo-controlled trial(乳がんリスクの高い閉経後の女性に対するアナストロゾールによる予防)」でランセット誌オンライン版に掲載された。この研究では血縁者に乳がんがあったり、これまでに良性の腫瘤が出来た経験を持つ女性が4000人弱集められている。このグループを無作為に2つに分け、片方にはアナストロゾール、もう一方には偽薬を5年間投与し、その間の乳がん発症率を調べている。効果判定のための臨床治験のデザインは完璧に行われている。結果は単純明快だ。乳がんの発生がアナストロゾールを投与されたグループでは半分に低下していた。特に、浸潤性を持つより悪性の乳がんの発症で比べると、その差はより顕著である様だ。アナストゾールは既に安価に手に入る薬である事を考えると、乳がん発症の予防薬として認める事が出来ると言う結果だ。もちろん、病気になる前から薬剤を服用する事がいいか悪いか?安価と言っても一錠300円を超す薬剤をずっと飲み続けるかどうか?様々な問題はある。しかし偽薬を服用した群のうち4%以上の方が乳がんを発症した事を考えると、2,000人のうち40人以上の患者さんのがん発症を止められた事は重要だと思う。気になる副作用だが、血圧上昇など、予想できる副作用はたしかに認められているが、この論文の結論としては深刻ではないとしている。残念ながら、この治験には日本人は含まれていない。乳がんの発症には民族差も関わると考えられるので、もし日本ではもう一度同じ様な治験をやり直さなければならないとしたら残念だ。

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