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5月24日 ボノボの母は性教育ママ(5月20日Current Biology掲載論文)

2019年5月24日

ボノボとチンパンジーは約200万年ぐらい前(人類で言えば直立原人が生まれたころ)に分離した極めて近い種だが、行動学的な大きな違いが注目され、チンパンジーとの比較研究が進んでいる。例えば道徳の起源を研究する目的などで研究されている。特に面白いのは性行動で、チンパンジーは発情しているメスは順位の高いオスを拒否することはないが、ボノボではメスが交尾するかどうかを決めることができる。その結果、オスの順位はあっても、多くのオスに交尾のチャンスがある。この結果、メス中心の類人猿では独特の社会を形成している。

さて、これまで親が子供に様々なことを教えることが知られていたが、今日紹介するドイツマックスプランク研究所を中心とする国際グループからの論文では、母親がオスの子供に様々な方法で性指導をしている可能性を調べた研究で5月20日号のCurrent Biologyに掲載されている。タイトルは「Males with a mother living in their group have higher paternity success in bonobos but not chimpanzees(母親が同じグループで生活していると父親として成功する確率が上がる)」だ。

この国際グループには世界のボノボやチンパンジーの研究グループが参加しており、当然我が国からも京大のモンキーセンターからボノボ研究者が参加している。研究ではそれぞれの研究グループが追跡しているボノボやチンパンジーの群れで、親子関係を特定し、オスの子供が成熟後も母親と同じ群れで生活している場合と、そうでない場合で、他のメスと交尾して子供をもうける確率を調べている。

群れによって大きなばらつきはあるが、ボノボでは母親と暮らしている方が明らかにメスと交尾に成功し子供ができる確率が高い。一方、チンパンジーの場合母親がいてもいなくても、オスが子供をもうける確率は変わらないことが分かった。

これまでの行動学的研究によって、ボノボの母親は子供が性的に成熟すると、1)発情しているメスのところに連れて行く、

2)子供が交尾中に他のオスが邪魔をするのを追い払う

3)他のオスの交尾を邪魔して子供の交尾チャンスを増やす、

4)子供の群れの中の順位を上げるために努力する、

ことが観察されていたようだ。この結果として、子供がオスとして成功することを確認したのがこの研究で、野生でも過保護がいかに大事か示している。

チンパンジーと比べてボノボは行動的によりヒトに近いと考えられている。常に群れの中心にいて、男を焦らし、その結果他の群れとも争わないボノボは、アリストパネスの「女の平和」と同じだ。今回、性教育まであることも分かった。人間の場合、教育ママと言うと悪いイメージがあるが、実際にはこの本能なしに人間は絶滅していたかもしれない。


  1. okazaki yoshihisa より:

    ボノボとチンパンジーは約200万年ぐらい前に分離した。

    ボノボ:人間に似た、教育ママ遺伝子を持っている点からも、より人間に近いですね。
    人間では、教育ママ遺伝子は種の繁栄には欠かせないみたいです。

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