AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 5月30日:MRIを用いた自閉症の簡易診断(Biological Psychologyオンライン掲載論文)

5月30日:MRIを用いた自閉症の簡易診断(Biological Psychologyオンライン掲載論文)

2019年5月30日

自閉症スペクトラム(ASD)論文紹介2日目は、自閉症の社会性を簡単に診断できる方法の開発研究を紹介する。ウェークフォレスト大学医学部を中心とするいくつかの研究機関が集まって行なった共同研究で、Biological Psychology オンライン版に掲載された。タイトルは「Diminished single-stimulus response in vmPFC to favorite people in children diagnosed with autism spectrum disorder (ASD児童の好みの人に対する前頭前野腹内側部の反応は低下している)」だ。

この研究の目的は、おそらく機能的MRIを使いつつも、難しい課題でなく、極めて単純な課題を使ってASD児童を典型児と区別する方法を開発することだと思う。この目的で、最初から社会性に関わることがわかっているvmPFC(前頭前野腹内側部)に絞って反応を調べ、4枚の異なる人間の顔写真と、4種類の物の写真を見た時のvmPFCの反応を機能的MRIで調べている。ASD児が写真を怖がらない様、写真を見せる時は必ず後ろにある写真を鏡を通して見るようにしている。対象は平均12−13歳のASD児と典型児で、ASDの診断はいくつかの基準を組み合わせて行なっている。

使った写真は、人間の顔では、人懐っこい女性の顔、笑う赤ちゃんの顔、特に感情が出ていない大人の顔、そして包帯を巻いて痛みを感じている顔。また、物の写真では、パソコン、ケーキ、お皿、便器の順番になっている。

MRIスキャンのあと、それぞれの写真を好きな順番にランク付けさせている。この時のランクずけはどちらのグループも同じで、みなさんが想像されるランクと一致している。

実験では、それぞれの写真を見た時のvmPFCの興奮(血流の上昇で検出している)を測定している。典型児では、自分で好ましいとして選んだ顔に強く反応する。これは、vmPFCが主に感情的に報われた時に反応する領域のためで、好きな顔を見た時ほど満足感が高いことになる。ところがASD児では、あとで選ばせた好き嫌いに関わらず、どの顔にもはっきりした反応が見られず、ノイズが高い。すなわち、好き嫌いを選んだとしても、それに対するご褒美回路がうまく動いていない。

最後に、好感を持つ写真を一回だけ見せた時の反応も調べている(これは連続的なMRIスキャンではどうしても頭が動く子供が多いので、ほとんどの子供に適用することを考えて行なっている)。予想通り、好ましいと思った顔に対する脳の反応を見ると、ASD児では典型児より強く低下している。しかし、モノ(この場合はパソコン)を見せた時にはほとんど差が認められない。

結果は以上で、これまで知られていたことの確認だけとも言えるが、MRIが必要とはいえ、かなり単純な課題でASDを典型児から区別することができる点が重要だ。今回の対象は、十分ASDの診断をつけることのできる年齢だが、いわゆるご褒美反応を見ていることになるので、幼児でも適用可能な検査を設計できるようになるのではないだろうか。幼児の場合、赤外光の検出器などMRI以外の方法も使えるので、簡単なASDの診断法へと発展できるのではないかと、勝手に期待している、。


  1. okazaki yoshihisa より:

    幼児の場合、赤外光の検出器などMRI以外の方法も使えるので、簡単なASDの診断法へと発展できる可能性あり

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*