AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 日本の科学報道に一言(7月25日)

日本の科学報道に一言(7月25日)

2013年8月8日

ニュースがないようなので、日本の報道に一言。 科学報道は正確な情報を伝えるだけではない。夢を伝える事も重要だ。そんなニュースがデンマークから伝えられている。70万年前の馬の化石から遺伝子を取り出し、全ゲノムレベルの再構成に成功した話だ。勿論マンモスゲノムと比べてもずっと時間的に古い話だ。これまでだいたい5万年ぐらいの化石のゲノムしか調べられていないのと比べると、画期的なことだ。また全ゲノムに近い解読であることもすばらしい。最新の技術を使って研究が行われており、私が知る限りで、1分子シークエンサーがなかったら出来なかった仕事の代表ではないだろうか。この結果、実際蛋白質に翻訳される遺伝子だけでなく、トランスポゾンと呼ばれる一種の寄生的配列の解析についても書かれている。さらに、4万年前の馬ゲノムや、現在の野生種、家畜化した馬と比べる事で、遺伝子間の交換についても詳しい解析が示されている。大きなブレークスルーで、新しい科学が始まったことを予感させる。  残念ながら日本のメディアは私がウェッブで調べる限りまだ報道していない。一方、NY Timesはほぼ完璧と言っていい記事をウェッブに載せている。さらに、フランスの通信社AFPの日本語サイトや、もちろんSciencelineの日本語サイトにも詳しく取り上げられている。科学記者が記者会見やブリーフをうまくまとめて記事にすることしかしていないと、このような記事は書けないだろう。と言うのも、外国からの仕事の場合、記者会見に行くわけにもいかないだろうから、論文に当たり、理解し、まとめることが必要だからだ。タイムリーに記事に出来ていないのはがっかりだが、時間をかけてもいつか報道してほしいと願っている。もちろんこの問題はメディアだけではない。ドイツにはネアンデルタール人を研究するためだけの研究所があり、今回の仕事もデンマークの博物館が関わっている。日本にはこのような研究を待ち望む国民も、政府もないとすると残念だ。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*