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6月20日 動物の起源(6月19日号Nature 掲載論文)

2019年6月20日

真核生物は、次に植物が属するバイコンタと動物とカビが属するオピストコンタ、そしてどちらにも属さないアメーバに分かれる。動物をさらに菌類からわけてホロゾアと呼んでいるが、このホロゾアに属する単細胞生物が分化した細胞を持つ多細胞生物が生まれるが、この段階を代表すると考えられているのが単細胞の襟鞭毛虫と、この細胞によく似た襟細胞を持つスポンジだ。

今日紹介するオーストラリア・クイーンズランド大学からの論文は、この襟細胞の類似性に着目し、発現遺伝子のパターンから、動物進化を読み解こうとした論文で、一種の機能ゲノミックスを絵に描いたような研究だ。タイトルは「Pluripotency and the origin of animal multicellularity(多能性と多細胞動物の起源)」だ。

この研究ではまずスポンジから、襟細胞、上皮細胞、多能性の間質細胞(原始細胞)の3種類の細胞を目視で分離してきて、それぞれの発現遺伝子を解析している。この発現パターンをもとに主成分分析を行うと、襟細胞がほかの2種類の細胞から最も分かれていることがわかる。また、これまで知られていたように、スポンジでは原始細胞が増殖や分化に関わる遺伝子を強く発現してスポンジの幹細胞として働いていることがわかる。

次にスポンジの遺伝子を、襟鞭毛細胞とメタゾアが分かれる時点から見て、新しい遺伝子と古い遺伝子(前メタゾア、後メタゾア)、そしてスポンジに特異的な遺伝子に分け、それぞれの細胞でどのタイプが発現しているか調べると、原始細胞では前メタゾア遺伝子が、襟細胞ではスポンジ特異的遺伝子の割合が多いことを見つけている。すなわち、襟鞭毛細胞とより近いのは、襟細胞ではなく原始細胞の方だ。

一見、矛盾するように見えるが、襟鞭毛虫は異なる生活サイクルを持っており、多細胞の集合体を形成することがある。この襟鞭毛虫の生活サイクルで現れる異なる段階と、スポンジの3種類の細胞とを比べると、原始細胞の遺伝子発現パターンが、襟鞭毛虫が細胞集合体を作った時の発現パターンに似ていること、逆に形は似ていても襟細胞や上皮細胞はこれらの単細胞生物とはほとんど似ていないことが明らかになった。

このパターンと、3種類の細胞の分化能を比べるため、細胞を標識して分化を追跡する実験を行い、スポンジの体を支える幹細胞が原始細胞で、全ての細胞へ分化すること、そして面白いことに、襟細胞は原始細胞と可逆的に分化転換を起こしていることがわかった。

以上の結果を総合して、可逆的に分化転換が起こっている襟細胞と原始細胞のセットは単細胞生物時期にすでに進化しており、このシステムを形態形成に使ったのが多細胞動物の始まりであると結論している。

単純にゲノムだけを比較するゲノム進化研究から着実に機能ゲノミックスが発展していることがよくわかる論文だ。この研究で使われたスポンジはqueeslandicaという学名がついており、大学と同じ名前のついた生物をわざわざ選んで研究する洒落っ気が感じられるのも好感が持てた。


  1. Okazaki Yoshihisa より:

    面白いことに、襟細胞は原始細胞と可逆的に分化転換を起こしている
    →やっぱり、先祖返りしたり分化したりと動的なんですね。
    ガン細胞⇔間質細胞などの動的な変化連想しました。

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