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8月8日 米国の幹細胞ビジネス事情(8月13日号 Stem Cell Reports 掲載論文)

2019年8月8日

我が国で幹細胞治療を検索すると、トップに美容形成クリニックが来て、結構細胞自体を使う治療がビジネスになっているという印象をうけるが、その詳しい実態となると把握しきれていないのではないだろうか。

今日紹介するアリゾナ州立大学からの論文はカリフォルニアを含む米国の南西6州で幹細胞を使った治療を行なっているビジネスの実態調査でStem Cell Reportsに掲載された。タイトルは「Characterizing Direct-to-Consumer Stem Cell Businesses in the Southwest United States (米国南西諸州で消費者に直接幹細胞治療を提供するビジネスの実態調査)」だ。

何かストーリーがあるわけではないので、それぞれのセクションで面白いと思った点を箇条書きにしておく。

使われている幹細胞の種類と治療対象

  • 脂肪組織からの幹細胞の使用は実に、60%に達し、その一部は他人からの細胞を用いている。次に多いのが骨髄で40%に達している。驚くのは、羊膜、胎盤を使うクリニックもあることだ。
  • 対象となる疾患の7割は整形外科疾患(半分がスポーツによる異常)で、それに続くのが炎症性(ほとんどが関節炎)疾患になる。意外なことに、美容形成は2割にとどまっている。しかし、自閉症まで実に様々な病気に細胞が使われている。

ビジネスモデル

  • 3つの会社がフランチャイズサービスを提供している。
  • 幹細胞治療だけを行なっているクリニックは25%で、4割は他の治療の一環として幹細胞を提供してもらい使っている。残りは、幹細胞が中心だが他の治療も行なっている。
  • 調査したクリニックは169箇所だが、そのうち51箇所は2つの異なるビジネス(例えば形成外科と再生医療)を同時に運営している。
  • ほとんどが疾患を絞って幹細胞を提供している。

幹細胞クリニックの運営

  • 幹細胞を唯一の治療手段にしているクリニックに絞ってスタッフを調べると、60%がMDで、残りは理学療法士、カイロプラクティシャン、自然療法士など。
  • 働いている医師のほとんどは整形外科か形成外科医。
  • 使われている幹細胞のほとんどは脂肪組織か、骨髄。

以上まとめると、広がりがあるとはいえ、まだまだ完全に確立した標準療法にはほとんどがなっていないことを示すとともに、多くが規制の網から逃れる形で運営されていることもわかる。

今後特に幹細胞治療をうたったクリニックについては追跡が必要で、脂肪組織を始め使われている細胞が適切に処理されているのか調査が必要になる。しかし、このような実態調査は我が国でも進めてほしいと思う。


  1. okazaki yoshihisa より:

    1:広がりがあるとはいえ、完全に確立した標準療法にはほとんどがなっていない

    2:多くが規制の網から逃れる形で運営されている

    Imp:
    患者さんの要求が新規ビジネス興隆を後押し。人間の欲望エネルギーの凄まじさを垣間見れる領域です。

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