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9月7日 サソリの毒はワサビの味(9月5日号 Cell 掲載論文)

2019年9月7日

痛み受容体として最も有名なのはカプサイシンや熱に反応するイオンチャンネルTRPV1、これ以外にも様々な刺激に反応するTRPA1がある。例えば、玉ねぎを刻んで涙が出たり、ワサビでヒリヒリするのはこの受容体の反応であることがわかっている。

今日紹介するカリフォルニア大学からの論文はTRPA1(ワサビ受容体と呼ぶ)を強く刺激する物質の一つに黒サソリの毒があること、またその刺激メカニズムを解明した研究で、9月5日号のCellに掲載された。タイトルは「A Cell-Penetrating Scorpion Toxin Enables Mode-Specific Modulation of TRPA1 and Pain(細胞内に侵入するサソリの毒はTRPA1と痛みを様式特異的に変化させる)」だ。

この研究では様々な生物毒を集め、培養細胞に発現させたワサビ受容体の刺激をカルシウム流入で検出する実験系でスクリーニングし、強い毒素としてオーストラリアのblack rockサソリが分泌するペプチドを特定し、ワサビ受容体トキシン(WaTx)と名付けている。そしてこの分子を欠損したマウスを用いて、WaTxがワサビ受容体特異的であることを確認している。

次に、作用メカニズムを、膜の裏表を区別したパッチクランプ法で調べ、WaTxは細胞膜上で反応するのではなく、先ず細胞膜を通過して細胞内に入った後、ワサビ受容体の構造変化に重要な連結部に結合して、チャンネルの開いた状態を維持することで、神経を興奮させることを明らかにする。

WaTxは炎症を全く誘導せずに痛みだけを誘導することができるという、全くユニークな痛み誘導因子としての性格を持っている。同じようにワサビ受容体を刺激できるたとえばマスタードのオイルなどは、痛みを誘導すると同時に必ず炎症が起こる。

話は以上だが、WaTxが発見されたことで、他の複合因子の影響を完全に排除して、純粋にワサビ受容体による末梢神経細胞の興奮メカニズムを研究することが可能になる。しかし、サソリの毒がワサビの味とは驚いた。


  1. okazaki yoshihisa より:

    WaTxは細胞膜を通過して細胞内に入り、ワサビ受容体の構造変化に重要な連結部に結合して、チャンネルの開いた状態を維持する

    Imp:直接痛み誘導イオンチャンネルに結合、痛みだけを誘導できる。

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