AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > RNA薬剤による高脂血症治療(1月4日号the Lancet掲載)

RNA薬剤による高脂血症治療(1月4日号the Lancet掲載)

2014年2月12日
今日紹介する論文は1月4日に発表されていたが見落としていた。2月号のNature Medicineに掲載された「Big pharma shows signs of renewed interest in RNAi drugs(大手製薬企業がRNAi薬剤へ新たな興味を示し始める様子を見せている)」という記事からこの論文を知った。RNAiとは合衆国のファイアーとメローが1998年に発見したもので、標的とする遺伝子に相補的な短いRNAを細胞内に導入すると翻訳が抑制されると言う現象だ。私もこの研究を知った時にはなんと簡単な方法で遺伝子の機能を抑制できるのかと驚いたが、あっという間に普及し細胞を扱っているほとんどの研究室で利用されるようになった。この画期的な発見で、ファイアーとメローは10年待つ事なく、2006年にノーベル賞を受賞している。簡単に特定分子の発現を抑制できると言う事で、当然臨床応用が考えられ、大手製薬企業も研究を始めたが、試験管内ではうまく行っても実際動物や人間に投与する段になると、多くの壁が立ちはだかり、撤退する製薬会社が相次いだ。それでもあきらめずに分子や症例を選び開発が進められて来たようで、今日紹介するのはAlnylam Pharmaceuticalsと言う会社が開発したPCSK9遺伝子に相補的RNAiを脂肪膜の中に閉じ込めた薬剤で、血中LDLコレステロールを下げる目的で開発された。LDLコレステロールはLDL受容体により補足され分解されるが、PCSK9は細胞内外でLDL受容体に結合し受容体の分解を促進するためLDL補足が阻害される。従って、PCSK9の量を減らせば細胞内外でのLDL補足が亢進し、血中LDLコレステロールが減る事になる。逆に、この分子の突然変異によって家族性の高LDL血症が起こる事も知られている。このRNAi薬剤の安全性と効果を確かめるための小規模臨床研究がこの研究の目的だ。結果は明確で、投与量に応じて血中PCSK9が減少し、それに応じてLDLも予想通り減少したが、ほとんど副作用はないと言う結果だ。今回は1回投与だけだが、それでも1ヶ月近く効果があり、期待通り病気と分子をうまく選べば有効な治療法の一つになりうる事を示した。特にこの分子に突然変異を持つ遺伝性の高LDL血症治療としては期待できる。昨年12月号のThe New England of Medicineにもトランスサイレチンという分子の突然変異でこの分子が心臓や末梢神経に沈着する希少難病にも同じ方法が試され、期待通りの効果があると報告されている。両方の分子とも主に肝臓で作られており、肝臓で分子が異常に作られる病気にこの治療法が期待できる事がわかる。コストの方は私も把握していないが、この方法は一旦有効性がはっきりすれば、同じ方法を他の分子に適用するのに時間がかからないと言う大きな利点を持つ。この結果は、大手製薬企業にと言うより、少なくとも肝臓で分子が過剰産生されることが原因となる希少難病の患者さんには朗報になると期待している。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*