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2月14日:朝日新聞記事(野中)アルツハイマー病から脳守るたんぱく質 阪大チーム解明

2014年2月14日
アルツハイマー病の国家プロジェクトJ-ADNIでのデータ改ざんが問題になっている。私自身現役の頃、このプロジェクトが始まると聞いて大きな期待をいだいた。おそらく参加した患者さんだけでなく、このプロジェクトの事を聞き知った患者さんも研究から生まれる成果に期待したはずだ。朝日新聞でも1面,3面に経過や関係者のコメントを大きく掲載している。新聞を読むと、責任者は何も語らず調査委員会の調査などに任せているようだが、この研究自体が中途半端な形で終わるのは許されない。やはり関係者自ら全てを語った上で、患者さんや医師の期待にどう答えるのかを早く示して欲しい。しかし、同じ朝日新聞がデジタル版でアルツハイマー病の新しい研究について報告しているのは皮肉だ。馬鹿げたスキャンダルとは無関係に研究は進む。ベルリンのMax-Delbrueck Centerと阪大蛋白研の共同研究だ。私にとってもこの分野の研究の流れの一つを理解するのに大変役に立った。研究はScinece Translational Medicine2月号に掲載され、「Lysosomal sorting of amyloid-β by the SORLA receptor is impaired by a familial Alzheimer’s disease mutation (SORLA受容体によるアミロイドβ分子のライソゾームへの移送が家族性アルツハイマー病の突然変異では障害されている)」がタイトルだ。専門外の私にも大変わかりやすい論文で、この病気の発症メカニズムについて理解を深めるのに役立った。研究ではSORLAと呼ばれる分子の機能と、この突然変異がなぜ若年性のアルツハイマー病を起こすのかについての疑問を、モデルマウス作成、細胞学的実験、分子間相互作用実験などを駆使して明らかにしている。これまでの研究でSORLAが、アルツハイマー病で蓄積するβアミロイドに結合する膜分子で、若年性アルツハイマーの原因遺伝子の一つである事はわかっていたが、動物体内でβアミロイドをどのように処理しているかなどわからない点も多かったらしい。この研究では先ず、SORLAの脳内発現を上昇させると、脳内のアミロイドβが低下する事をモデルマウスを使って明らかにしている。次にこのマウスの脳のアミロイドβの動態解析から、この分子は結合したアミロイドβを細胞内分解システムに運ぶ役割を持つっていると言う結論を導き、分子及び細胞のレベルで確かめた。これらの結果を総合し、SORLAがアミロイドβと直接結合して補足し、アミロイドをリソゾームと呼ばれる細胞内器官に移行させる過程に関わる重要な分子である事を示している。この機能のおかげで、アミロイドβが脳内に過剰に蓄積する事が防がれている。さらに家族性アルツハイマー症でこの分子に見られる突然変異ではアミロイドβが結合できなくなっている事をつきとめ、この分子がアミロイドβを処理できなくなることが病気が起こるメカニズムであると特定する事にも成功している。残念ながら朝日の野中さんの記事では、この病態解析など細部については全く紹介していないが、アミロイドβのリソゾームへの移行と分解過程が、治療法開発の一つの標的になる事は理解できる記事だった。ただ、どのようにそれを実現すればいいのか、この論文でも何も示されていない事も確かだ。まだまだ戦いは続きそうだ。J-ADNIも問題を早期に処理して、戦線に復帰して欲しい。

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