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2月23日:早産児の言語発達(2月22日号Pediatrics掲載論文)

2014年2月23日
 我が国では大体0.8%程度の超低体重児が生まれている。もちろん我が国では世界最高水準の医療が受けられ、新生児死亡を減らし、知能を中心に発達障害を軽減するための努力が行われる。この体制を続けるためには、子供の将来のために昼夜を分かたず献身的に働いてくれる新生児ICUのスタッフが安心して働ける環境づくりが必要だ。ただ、この関門を突破しても、発達障害の確率が高いこのグループの子供達にとっては、その後の心身の発達時ににおかれる環境が重要だ。今日紹介する小児科専門誌Pediatrics2月22日号に掲載された論文は、出生時600−1200グラムの超低体重児の言語発達について研究している論文で「Trajectories of receptive language development from 3 to 12 years of age for very preterm children (超低体重児の3−12歳までの言語理解発達の軌跡)」がタイトルだ。元々この研究は、超低体重児の脳障害を予防するために使われるインドメサシン(非ステロイド系抗炎症剤)が言語発達に及ぼす効果を調べる事が主目的だったが、子供がおかれた家庭環境などもよく調査が行き届いており、環境の影響も同時に評価している。研究では1989年から1992年にかけてアメリカのロードアイランドで生まれた超低体重児500人余りを無作為に選んでインドメサシン投与、非投与群にわけ3,4.5,6,8,12歳と5回にわたってPeabody Picture Vocabulary Testと呼ばれる言語能力テストを行っている。インドメサシン投与の効果は男児のみにしか見られず、差が見られるのも6歳時点までで、その後は投与、非投与で差は無くなる。一方、女児では最初から大きな差が認められないと言う結果だ。ただ女児でも悪い影響はなさそうなので、6歳までの成長に効果があるなら予防的投与をしても問題はなさそうだ。またこの研究の示すもう一つ重要な点は、12歳までの環境、特に母親の教育レベルが言語発達に大きな影響を持つ点だ。即ち大学教育を受けた母親に育てられた場合、大学教育を受けていない母親と比べて大きな差が見られる事だ。もちろんこの結果が全て育った言語環境を反映していると決める事は出来ないが、豊かな言語環境を超低体重児に提供する価値は十分ある。すなわち成長については全て母親任せにせず、言語や脳発達を促す様なプログラムを提供できる特別な保育システムを整備する価値はあるように感じた。特に少子高齢化が進む我が国で健康な新しい国民を一人でも増やす事の意味は大きい。しかし、国の借金を考えると新しい政策がますます取りにくい状況にある。折しも、2月22日号のThe Lancetに、ギリシャ経済危機により国民の健康がどのように変化するかについての英国ケンブリッジ、オックスフォード大学の共同調査が発表された。タイトルは「Greece’s health crisis:from austerity to denialism (ギリシャの健康危機:緊縮経済から否定論)」だ。この論文によればギリシャ緊縮経済が始まった2008年から麻薬中毒者のエイズ患者が10倍、鬱病が2.5倍、自殺が1.5倍に増えただけでなく、小児の死亡率も40%増加したと言う。我が国が全ての子供を本当に大事にする道を選ぶのか、あるいはギリシャのように借金のつけを子供の健康で払うのか、今岐路に立っているように思える。親子の健全な成育を目指した厚労省の「健やか親子21」は今年度で終了するが、今後どのような施策が行われるのか見守って行きたい。

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