AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 2月26日:川崎病に対する抗TNFa抗体治験結果(2月24日発行The Lancet掲載)

2月26日:川崎病に対する抗TNFa抗体治験結果(2月24日発行The Lancet掲載)

2014年2月26日
SNSシェア
私も臨床医の経験があるが、自分の診ている患者さんがこれまで記載のない新しい病気にかかっている事に気づいて、その病気を自ら定義する事など夢のまた夢だ。そのためには患者さんを詳しく観察し、類型化し、新しい病気である事を科学的に証明すると言う医師・研究者の能力と努力の両方が必要だ。我が国でこれを成し遂げた数少ない一人が、1961年この病気を発見し、1967年にこれが新しい病気である事を最初に報告した川崎富作先生で、現在も世界中で川崎病という言葉が使われている。小児の病気で、全身の血管に炎症が起こるが、後遺症として動脈瘤が発生する可能性がある。はっきりとした原因は不明だが、免疫グロブリンとアスピリンの注射により動脈瘤が起こる確率は25%から5%に低下するため、この治療が第一に行われる。ただ、この治療によって発熱が続いたり、繰り返したりする患者さんでは、動脈瘤が起こる確率が高く、他の治療を組み合わせる事の必要性が認識されていた。幸い、この患者さんでは血中のTNFaと呼ばれる炎症を引き起こす物質が高い事から、現在リュウマチなどの自己免疫疾患に効く事がわかっている抗TNFa抗体を使用したらどうかと様々な研究が進んでいた。そして、最終的な第3相治験研究としてカリフォルニア大学を中心に多施設共同研究が行われ、結果がThe Lancetに報告された。タイトルは「Infliximab for intensification of primary therapy for Kawasaki disease: a phase 3 randomised, double-blind, placebo-controlled trial (川崎病の一次治療を増強するための抗TNFa抗体の効果:第3相、無作為、2重盲検治験)」。研究では196人の1歳から4歳までの川崎病患者さんを集め、抗体を打つ群と、偽薬を打つ群に分け10週間経過を観察している。結果は明白で、まず抗TNFa抗体により免疫グロブリン注射に伴う発熱などの炎症反応がほぼ抑制され、2週間目で調べたときのZ-scoreと呼ばれる動脈の太さの値が下降動脈で改善していたと言う結果だ。長期効果などははっきりしなかったようだが、副作用もなく初期の炎症が抑えられる事から、免疫グロブリンとアスピリン注射に加える治療として十分価値があると言う結果だ。おそらく、日本でも既に検討されていると思う。抗体薬は高価だが、将来を担う子供のために是非健康保険が適応されている事を願う。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

*


The reCAPTCHA verification period has expired. Please reload the page.