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3月6日 子宮移植(Fertility and Sterilityオンライン版掲載論文)

2014年3月6日
子宮が原因の不妊はこれまで治療法がなかった。そのため、養子やある場合には代理母に頼る事になるが、後者は我が国では原則禁止されており、あるタレントが外国の代理母を利用したと大騒ぎになった。スウェーデンでも代理母は禁止らしい。ではどうするか?これを解決する医学側の答えとして子宮移植の可能性を示したのが今日紹介する論文だ。スウェーデン・ヨテボリ、スペイン・バレンシア、オーストラリア・ゴールドコースト、そしてアメリカ・フロリダの国際チームの研究でFertility and Sterility誌オンライン版に掲載された。「The first clinical uterus transplantation tiral:a six-month report(最初の子宮移植臨床治験:6ヶ月目のレポート)」がタイトルだ。この論文を読むと、これまでも1例報告的には子宮移植の報告が出ており、2013年にはトルコのグループが子宮移植後妊娠にまで至った(出産には至っていない)ケースが報告されているらしい。それに対してこの研究は小動物、大動物、サルと10年を超す動物実験を経てプロトコルを作成し、臨床研究として登録した治験だ。ゴールは子宮移植後、人工受精卵を着床させ、出産に至るかにセットしている。従って今回のレポートは途中経過になる。驚くのは、生体移植が適していると言う動物実験の結果に従って、脳死移植ではなくボランティアから子宮を摘出して使っている点だ。論文の随所に、倫理的・科学的妥当性についての記述がある。私も知らなかったが、アメリカでの腎移植の4割は生体腎移植らしい。また、移植後免疫抑制剤を服用している母親から生まれた子供は既に15,000人を超しているようだ。やはり生体肝移植のような命の危険があるわけではない不妊治療にボランティアとは言え生体から取り出した一個しかない子宮を使う事に大きな懸念が示される事は覚悟しているようだ。これら施設全体で、2012年から9例の手術を行い、6ヶ月時点で7例の子宮が生着、生理も正常にあると言う結果だ。生着を促進するためドナーからの子宮摘出には特別の注意を払っているようで、摘出手術に10−13時間をかけているのに対し、ホストへの移植手術は4−6時間で終わっている。術後1年から1年半で人工受精胚の移植が最初から計画されている事から、実際に移植された子宮が妊娠に耐えるかどうかはもうすぐわかるだろう。新聞も大騒ぎになるかもしれない。   実を言うと2年前ある財団の研究助成の審査をしていたとき、某大学産科の若手研究者がサルを使って移植子宮での妊娠可能性を調べている研究を提案しているのを読んで、ここまで研究が行われているのかと驚いたが、実際にはもっと進んでいた事を思い知らされた。1年ほどして出産が可能だと言う結果が出た時、日本ではどう受け取られるのだろう。もう少し待ってみよう。

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