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3月14日ムコ多糖症の遺伝子治療(Human gene therapyオンライン版掲載論文)

2014年3月14日
ムコ多糖症は細胞内器官リソゾームにムコ多糖類が蓄積するため全身の臓器が進行的に侵されて行く病気で、基本的にはリソゾームで働いている分解酵素をコードする遺伝子の突然変異が原因だ。欠損する遺伝子に応じて異なる病像を示す。遺伝子欠損であるため、これまで欠損している酵素の補充療法が行われて来た。ただ最も深刻なのが脳障害であるため酵素を脳内に投与する事は困難で、新しい治療法が求められていた。遺伝子欠損が原因であるため、当然考えられるのは遺伝子治療で、欠損した遺伝子を脳内に導入して治療できない検討が進んでいた。中でもフランスは遺伝子治療に力を入れている。ネッカー病院で行われた小児の先天性免疫不全の治療は世界的にも有名だ。今日紹介する論文もネッカー病院からの報告だ。ムコ多糖症のなかでNsulfoglycosamine sulfohydrolaseが欠損している4人の子供の脳内に、アデノ随伴ビールスベクターを使ってこの遺伝子を導入し、1年まで経過を見た臨床研究だ。第1相/第2相治験として位置づけられており、研究の主目的は安全性の確認だ。また、アデノ随伴ビールスベクターの場合ベクターに対する免疫反応の可能性があり、この治験では免疫抑制剤タクロリムスが使用されており、この副作用も考慮しなければならない。結果だが、1年の経過観察期間、気道炎症など幾つかの治療を要する症状が起こったが、基本的には遺伝子治療自体の副作用はないと言う結論だ。では患者さんに取って最も気になる効果はどうだろう。残念ながらコントロールがないため効果があったのかどうかを科学的に検討する事は難しいようだ。ただ治療を2歳8ヶ月で受けた最も若い患者さんは、様々な脳機能テストで明らかに改善が見られたとしている。希望が生まれた事は確かだ。この希望を科学的に確認する必要がある。治療法自体は論理的に納得できる。この方法の安全が確認された事で治験を次の段階へと進める事が出来る。特に今回の治験で治療開始が早いほど効果が得られる可能性が高いことが示唆されている。この点を勘案した新しいプロトコルでの早期治験を望みたい。遺伝子治療も一歩づつ前進していると言う実感を持った。

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