AASJホームページ > 新着情報 > 論文ウォッチ > 3月21日遺伝子検査による大腸がんスクリーニング(3月19日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

3月21日遺伝子検査による大腸がんスクリーニング(3月19日号The New England Journal of Medicine掲載論文)

2014年3月21日
抗体を使って行う便の潜血検査は有効性が最もはっきりしているがん検査の一つで、アメリカ国立衛生局も強く推薦している。ただ3割程度のがんが見落とされる事も事実だ。この発見率をがん特異的なDNA検査を使って上げられないかを大規模調査で調べたのが今日紹介する研究で、一万人近くの人を、DNA検査、免疫検査、及び直腸鏡で調べて、最終診断と言える直腸鏡による診断率と比較している。論文は3月19日号のThe New England Journal of Medicineに掲載され「Multitarget stool DNA testing for colorectal-cancer screeing(便に含まれる複数の遺伝子を標的とした直腸結腸がんの集団検診)」がタイトルだ。   がんの遺伝子診断は、がんからこぼれ落ちる細胞が壊れた後も便の中に残っているDNA断片を標的に行う。さて直腸がんではどの遺伝子を使っているのかと論文を読んで、不勉強を思い知った。多くのがんで定番の突然変異型KRAS遺伝子は納得だが、他に用いられているのがNDRG4とBMP3遺伝子の発現調節に関わる部分で、しかもメチル化されたDNAだけを特異的に検出する検査だ。事実あらゆる細胞のゲノム上にはこれらの遺伝子は存在しており、がん特異性はない。ただこれらはがんに対して抑制的に働くため、がんがこの遺伝子をDNAメチル化と言う手段を使って不活性化している。従って、がんではこれらの遺伝子が特異的にメチル化されているが、正常細胞ではメチル化されていない。この差をPCRで検出している。調べてみると、2012年に実験的に可能性が検証された方法で、迅速な開発が行われている事がわかる。結果は診断率が直腸鏡診断を100%としたとき、ガンで92.3%、高い異型性を示す前癌状態で69.2%と、これまでの免疫法のそれぞれ73.8%、46.2%をはるかに凌いでいた。特異性や偽陰性率ではDNA検査は多めに検出してしまうようだが、検診目的を考えると納得できる範囲だ。もちろん問題もある。論文を読むと、便を検査に使う場合DNA量が足りなかったりする結果、検査不能率が抗体によるテストの20倍に達する点だ。もちろんコストもかかると思われるが、論文からははっきりわからなかった。しかしコストが見合えば優れた検査で、広く普及すると思う。考えさせられるのは、メチル化を利用してガンのスクリーニングを行おうと考える日本の企業がどの位あるかだ。引退してから論文を読み始めてわかるのは自分が不勉強であった点で、様々な分野で医学が急速に進展していることを思い知らされている。医療産業振興のかけ声はわかるが、企業がこの進展を取り込んでいるのか心配だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*