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4月24日生活習慣病の生活改善(4月23日発行Diabetes Care掲載論文)

2014年4月24日
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2型糖尿病の治療の柱の一つは食事を含む生活習慣の改善だ。ただこの柱は医療機関にとって最もハードルが高い。外来食事指導の診療報酬は低く、スタッフも少ない。更に、予備軍の指導に至っては報酬は得られない。従って我が国の医療にとって、糖尿病やボーダーラインの人に効果的な生活習慣プログラムを提供する体制が医療機関とは別に構築される事は重要だ。これについては厚労省も認識し、自治体と協力して様々なプログラムを提供できる様施策を進めようとしている。将来の医療費上昇を考えると、医療保険でカバーされる部分を抑制し、自己費用で日常健康増進等のために行う部分を増加させる事が重要になる。この時の問題は、巷にあふれる様々な健康商品やサービスの効果が科学的に保証出来ていない点だ。従って、行政や学会も積極的に様々なサービスを科学的に検証し、検証結果を公表する事が重要になる。論文を読んでいると、医療外の様々な商品やサービスの効果検証が現在盛んに行われている事を知る。例えばマッサージの上腕動脈血流への効果の無作為化試験などの論文(Archives of Physical Medicine and Rehabilitation 2014)を見たりすると、ともかく科学的(統計学的)に検証を進めると言う強い動機を感じる。確かに医療外で行われるサービスは多様であり、科学的検証がしにくい。しかし科学的検証が済んだ物を認証するようになれば、自ずとそれが当たり前になる。今日紹介する論文は約230名の2型糖尿病患者について糖尿病の生活改善治療のプログラムの効果を検証したカリフォルニア州立大学サンディエゴ校からの研究だ。タイトルは「Weight loss, glycemic control, and cardiovascular disease risc factor in response to differential diet composition in a weight loss program in type 2 diabetes: randomized control trial(2型糖尿病に対する減量プログラムでの食成分が体重、血糖、心臓病リスクに及ぼす効果:無作為対照化試験)」だ。参加者は3群に分けられまず6ヶ月朝昼晩と決まった食事の提供を受ける。一群は低脂肪食、2群は低炭水化物食、3群は通常食が提供される。他にも最初は適当量のスナックなども提供され制限食に容易になれる様計画されている。残りの半年は、望めば主食だけが1回提供される移行期で、半年と1年で効果を見ている。プログラムは1年に一回の面談や、電話やウェッブサイトによる指導なども行われており、定期検査を受けてくれた場合は25ドルが貰えるという動機付けも行われている。結果は予想通りと言うか、低脂肪でも低炭水化物でも食事制限により体重は減少するが、炭水化物を制限した食事の方が体重減少効果が高く、6ヶ月で10%、12ヶ月で9%の減量に成功している。特に血糖や参加ヘモグロビンなどの血液検査値では炭水化物制限群でのみ大きな改善が見られている。更に重要な事は、低脂肪食群も、低炭水化物群も糖尿や高血圧に対する薬剤服用が必要なくなったケースが多い事で、直接医療費から健康増進費への移行に成功した例になる。結論として、一年にわたって提供された低炭水化物食は、治療中の糖尿病患者さんへのプログラムとして有効であると言う判定だ。結果は当たり前だが、「ダイエットなど効くのが当たり前で、やり方はどこにでも書いてある」と突き放さず、科学的に検証された様々なメニューを提供する事の重要性を実感する。アメリカでは、既存の薬剤のリパーパス(これまでとは違う病気に使う)にも国が助成し医療費抑制を図っている。医療産業振興は、この様な構造改革と平行して進めないと絵に描いた餅で終わる。健康サービスはどんなに業界からの抵抗があろうと、科学的に検証し公開を進める施策を進めて欲しいと望んでいる。

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