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4月29日CRISPRの進化(Nature Biotechnologyオンライン版掲載論文)

2014年4月29日
4月2日このコーナーで、CRISPR技術を使って肝細胞が障害される生まれつきの突然変異を正常に戻し病気を治癒できる可能性を示した論文を紹介した。ただヒトゲノム遺伝子編集に応用するには標的遺伝子の編集を高い精度で行う必要があり、この系で使われるCas9分子が持つ標的以外の場所を切る活性が懸念されていた。この問題を解決するための新しい技術を示したのが今日紹介する論文だ。同じ趣旨の論文がNature Biotechnologyオンライン版に同時に発表されていたが、私の独断でより優れていると思えたハーバード大学からの論文を紹介する。タイトルは「Dimeric CRISPR RNA-guided FokI nucleases for highly specific genome editing(特異性の高いゲノム編集のための2量体CRISPR RNAにガイドされたFokI核酸分解酵素)」だ。これまでのCRISPR技術は標的DNAに結合する短いRNA(CEISPR)にガイドさせて標的DNAにCAS9を導き、Cas9の持つDNA切断能を用いて標的DNAを編集する。このCas9の切断活性は一個の分子があれば十分なため、ガイドRNAがホストのDNAと適合しない場所でも一定程度のDNA切断が起こってしまうのではと心配されている。これを解決するために、このグループはCas9のDNA切断活性を除去した上で、これまでもDNA編集に用いられてきたFokIと呼ばれるDNA切断酵素を融合させた分子を作成した。FokIは2分子が組合わさった時のみ活性が出るため、FokI-Cas9分子による切断にはホストDNA上の2か所の標的部位が必要になり、特異性の上昇を期待できる。これを効率よく実現するため、グループは2種類のガイドRNAを効率よく発現させるシステムを開発するとともに、2種類の標的DNA間の最適な距離などを決めている。論文では、この新しい方法の有効性をヒト細胞の遺伝子編集に試した結果を示している。期待通り、これまで以上に特異性が高く、また編集効率が高い新しいCRISPRテクノロジーに仕上がっており、大きな期待がもてる。このように、素晴らしいテクノロジーは世界中の研究者を更に新しいテクノロジーの開発へと向かわせる。CRISPRはどこまで進化するのか、当分目が話せない。

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