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5月2日:進む多発性硬化症治療薬の治験(The Lancet Neurology5月号掲載2論文)

2014年5月2日
現役を退いてから読む論文の数は増えているが、一種乱読で特に焦点を当てて読んでいるわけではない。それでも最近多発性骨髄腫に対する治療薬についての論文が目につく印象がある。このコーナーでも既にフィンゴリモド、スタチン、ベンズピレンについて紹介した。もちろん患者さんにとっては検証がすんだ治療薬は多いほど望ましい。今日も新しい薬剤についての治験研究を2編紹介しよう。いずれもThe Lancet Neurology5月号に掲載された論文で、一編はJohn Hopkins大を中心に行われた超除放性インターフェロンβの第3相治験、後の一編はロンドン大学を中心の抗CD25抗体ダクリツマブの第2相治験についてのレポートだ。タイトルはそれぞれ「Pegylated interferon beta-1a for relapsing-remitting multiple sclerosis(ADVANCE): a randomized, phase3 double blind study(多発性硬化症の再発—寛解時期ペグ化インターフェロンβ1aの効果:2重盲検無作為化第三相試験)」と「Daclizumab high-yield process in relapsing-remitting multiple sclerosis(SELECTION): a multicentre, randomized, double-blind extension trial(多発性硬化症再発・寛解期のダクリツマブの高効果治療(SELECTIOO):他施設、無作為化、2重盲検、継続治験)」だ。   最初の論文では最終的に1500人余りの多発性硬化症(MS)患者さんをランダムに3グループに分け、超除放性のインターフェロンβ1a(IFβ1a)を無投与、2週間に1回投与、4週に一回投与の3群にわけて48週間投与、再発率、障害の進行、MRI検査による新しい病変の出現を調べている。結果は1年に換算した再発率が対照群の0.39に対して、それぞれ0.26、0.29、症状が進行した率は、0.105に対して、0.068, 0.068、新しい病変の数では10.9個に対して3.6,7.9個と投与群で著明な効果が見られている、普通のIFβ1aに関しては既に治験が終わっており、ほぼ同様の効果が見られる事がわかっているが、毎日注射が必要だ。一方この超除放性IFβ1aは2週間に1回注射すればよく、患者さんの負担の軽減になること間違いない。副作用については、注射部位のはれ、インフルエンザ様症状、頭痛、発熱だが、ほとんどの患者さんは48週まで治療を続ける事が出来ている。   2編目の論文は一種の第2相試験だが、投薬中止の影響についても調べている点がユニークだ。これまでもMSには様々な抗体薬が使われている。CD25抗体はIL-2の受容体の一部で、NK細胞に強く発現しており、NK細胞の活性を押さえて治療を計ると言うのが基本的アイデアだ。この研究は第2相治験ですでに効果が見られたと思われたダクリツマブの治験を延長して、薬効を更に詳しく調べる目的で行われている。このため、最初の治験に続いて薬剤を投与し続けるグループ、薬剤を中止して様子を見たあと、また投与を再開するグループ、そして新たに抗体投与を始めるグループの3群を新たに設定して2年間の経過を見ている。結果は明確で、抗体を続けていると再発率や新しい病巣の出現は押さえられるが、中止すると再発率が上昇する。また、抗体の効果は中止後12週位で見られるようになり、中止した結果NK細胞が再度上昇する。一方、治験延長後から抗体投与を行うと、それまで高かった再発率が低下する事も確認された。   以上まとめると両方の薬剤ではっきり効果が見られている。うれしい事だ。少し残念なのは投薬を中止するとMSが再発する事で、この薬剤では完治を望む事が難しい点だ。除放性のIFβ1aも同じだろう。とすると、どうしても副作用との戦いになる。次のターゲットとして是非完治を目指した戦略の開発をお願いしたいと思った。

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