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5月12日:ダーウィンフィンチの自助努力を助ける(Current Biologyオンライン版掲載論文)

2014年5月12日
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多くの野生生物が絶滅の危機にあるが、ほとんどは私たち人間が原因を造っている。人間の生活圏の拡大による環境破壊は主要な原因だが、野生生物が保護されている場合でも、様々な人的原因で野生生物は危機にさらされる。今日紹介する論文は、ダーウィンの名前がついているダーウィンフィンチを守るためのユタ大学のグループの研究で、オンライン版のCurrent Biologyに掲載された。タイトルは「Darwn’s finches combat introduced nest parasites with fumigated cotton(人間が持ち込んだ害虫に対してダーウィンフィンチは消毒された綿を使って戦う)」だ。ガラパゴスに住むダーウィンフィンチの大きな多様性にダーウィンは強い感銘を受けたと言う。ただガラパゴスのダーウィンフィンチも今は人間によってガラパゴスに持ち込まれた様々な害虫に悩まされているらしい。中でも巣に卵を産みつけるイエバエの幼虫に血液を吸われる事で、無事に育つヒナの数が減っている。このグループはこれまでの生態観察に基づき、このハエを巣から退治する名案を思いついた。消毒薬のついた綿を巣の近くに置いておき、フィンチの巣作りの際この綿を使うようにしむける戦略だ。結果は予想通りで、消毒薬がついているかどうかに関わらず、フィンチは綿を巣のクッションとして利用する。ヒナが育った後巣を回収して調べると、消毒薬で処理した綿を使った巣のなかの害虫は半減しており、消毒済み綿が1g以上使われた場合はほぼ絶滅に成功している。もちろん人工的に造って消毒薬を噴霧した巣を用意する事も出来、その効果は確かめられているのだが、今回示された巣作りの際の材料として消毒薬が噴霧された綿を提供する方が多くのフィンチに対応できる。地道な努力が科学的に進んでいる事を実感した。

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