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6月21日脂肪組織と炎症(7月1日号Cell Metabolism掲載論文)

2014年6月21日
ずいぶん昔のことになるが、Peter Libbyさんのセミナーを聴いて、動脈硬化が慢性炎症として理解されているのを知った。その後あれよあれよと言ううちに、糖尿病からメタボまで、全て背景に炎症があるとされている。事実2型糖尿病のマーカーとして炎症生のサイトカインが使われているのを聞くと、私の様な素人には説得力のある話だ。しかし皆が納得したことについては必ず警告が発せられる。これが科学だ。今日紹介するテキサス大学からの論文は、「炎症は悪だ」とするこれまでのドグマに一石を投じた研究で、7月1日号Cell Metablismsに掲載された。タイトルは「Adipocyte inflammation is essential for healthy adipose tissue expansion and remodeling(脂肪細胞の炎症は健全な脂肪組織の拡大とそのリモデリングに必要とされる)」だ。全てマウスでの話であることを先ず断っておく。研究では様々な遺伝子改変マウスが用いられている。新しく脂肪細胞が増殖すると従来の細胞から区別できるマウス、そして脂肪細胞特異的に炎症が抑制されている3種類のマウスを使って、脂肪細胞の炎症が抑えられることでどのような変化が起こるか調べている。全ての動物モデルで脂肪細胞の炎症が抑えられると、確かに脂肪組織の発達、特に脂肪細胞の増殖が抑制され、体重の増加も抑えられる。脂肪が減って体重も下がるとは一見素晴らしいように思えるが、大阪大学の松澤先生達によりその機能が明らかにされて来たアディポネクチンは低下し、血中グルコースが上昇し、インシュリン抵抗性の糖尿病と同じ状態に陥る。さらにこの状態で高脂肪食を取ると、脂肪組織に脂肪が蓄積されない代わりに、肝臓に貯まり始めると言う結果だ。結論的には、炎症は脂肪細胞の増殖と脂肪組織のリモデリングに必要で、この正常な脂肪組織の発達が無いと、脂肪を脂肪細胞に蓄積し代謝することが出来なくなり、行き場を失った脂肪が肝臓に蓄積されるとともに、脂肪細胞から分泌されるアディポネクチンが低下し、インシュリン抵抗性の糖尿病状態が引き起こされるようだ。昔、松澤先生から良い太り方は健康だと言う話を聞いたが、この仕事はそれを裏付けるように思う。ただ、ヒトでもそうなのか、慢性的炎症の長期的効果はどうかなど調べることは多いはずだ。いずれにせよ、「脂肪細胞は悪だ」と言う話は疑った方が良さそうだ。

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