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6月30日:魚の発電装置(6月27日号Science誌掲載論文)

2014年6月30日
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電気ウナギ、電気ナマズ、しびれエイは知っていたが、今日紹介する論文を読むまで魚類の発電機構が進化上で6回も独立に発生しているとは知らなかった。事実しびれエイと電気ウナギは種として5億年前に分離している。6月27日号のScience誌にミシガン大学から発表された論文「Genomic basis for the convergent evolution of electric organ(電気装置進化のゲノム基盤)」は、この独立した進化にメカニズムの共通性があるかどうかを調べている。研究では、先ず電気ウナギの全ゲノム解析を行い、ゲノム遺伝子構成について決めている。この結果に基づき、次に発電を行うelectrocyteと呼ばれる細胞が集まる発電装置特異的に発現している遺伝子を、電気ウナギ3種及び電気ナマズ、elephant fishで網羅的に調べている。全ての種で電気装置は筋肉が変化して起こる。6回も独立して筋肉細胞から進化することから考えると、電気装置の進化に共通の分子機構があることが予想される。予想通り、ほとんどの電気装置で発現が変化する遺伝子は共通だ。この研究から見えるシナリオは次の様なものだ。先ず筋肉分化の早い段階で筋肉への分化を抑制する転写ネットワークが生まれる。こうして出来た特殊な細胞に絶縁のための特殊コラーゲン、電気を貯めるための電圧依存性のイオンチャンネルの発現が上昇し、電池としての機能を構成する。平行して筋繊維の収縮に関わるカルシウムチャンネルを抑制し、電池細胞自体に形態の変化が起こらないようにする。さらに、インシュリン様増殖因子発現を上昇させ細胞のサイズを増大させ、電池機能を高める。よく出来たシナリオだと感心する。とは言ってもかなり複雑な過程が進まないと電池は出来ないようだ。これら分子発現の変化をもたらすゲノム上の変化は何か、これらのプロセスはどの順番で起こったのか、何が選択圧として働いたのか、疑問は尽きない。しかし次世代シークエンサーが確かに時代を変えている。もうすぐ日本進化学会が高槻で行われるが、我が国でこのツールがどれほどの拡がりを見せているのか調べてみたい。

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