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8月23日:RNA干渉薬によるエボラウィルス感染治療の可能性(8月20日号Science Translational Medicine掲載論文)

2014年8月23日
RNA干渉は(siRNA)、長さ20-25塩基対のRNAにより特定のメッセンジャーRNAを破壊してしまう方法で、希望する分子の細胞内での発現を特異的に抑制する方法として期待されている。問題は、RNAが目的の細胞内に到達する効率が低いことで、この効率を上げようと開発競争が繰り広げられているが簡単ではない。最初ほとんどの大手創薬では核酸薬部門を設定して開発を行っていたが、細胞内へのデリバリーは困難と結論して、撤退した会社も多い。それでも、効果を持つRNA自体は開発が容易なため究極のテーラーメード医療になる。現在この方法を使おうとする主な標的はガンと感染症だ。特にウィルス性肝炎などでは、明らかに効果があることが確認され始めていた。今日紹介するカナダの製薬ベンチャーTekmiraとテキサス大学からの論文は、マーブルグウィルス感染症にRNA干渉が有効であることを示した研究で、8月20日発行のScience Translational Medicineに掲載された。タイトルは「Marburg virus infection in nonhuman primates:therapeutic treatment by lipid-encapsulated siRNA(サルでのマールブルグウイルス感染:脂肪にくるんだsiRNAによる治療)」だ。マールブルグウィルスと言っても聞き慣れないと思うが、実は今世界の課題になっているエボラウィルスと同じフィロウィルスの仲間だ。この研究では、ウィルスRNAがコードする7つの分子の一つNP(核蛋白)遺伝子に対するsiRNAを用意し、これを細胞内デリバリーのために脂肪でくるみ、それを静脈内投与している。結果は極めて明快で、ウィルス感染が完全に成立してウィルスが血中に現れた段階でも、100%のサルを完全に治癒することが出来たと言う結果だ。この方法で、血中からウィルスが消失することも確かめている。論文では、特に病気の後期でも効果があることが強調されている。この結果は、将来予想されるマールブルグウィルス感染に対して備えが出来たことを意味するだけではない。最も期待されるのは、現在流行しているエボラウィルスにも同じ方法を使える可能性だ。事実このグループは2010年The Lancet誌に同じ方法を用いてエボラウィルスを感染させたサルを治療できることを示している。この時選ばれたウィルス分子は今回選んだNP分子とは違っていたが、デリバリー方法も含めてこの方法の有効性を示すには十分だ。RNA干渉法が機動性の高い方法であることを示す意味でも、今回の流行で臨床研究が行われることを期待する。RNA干渉は発見されてまだ15年もたたない現象だ。様々な問題があるとは言えこれほど短期間で臨床応用が可能になりつつあるのを見ると、医学は着実に進歩していることを実感する。今後も是非この進歩の紹介を続けたい。

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