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9月7日:多発性骨髄腫の治験情報(9月4日発行The New England Journal of Medicine掲載論文)

2014年9月7日

多発性骨髄腫についてはこれまで2回紹介した。一回はエクソーム解析の結果についてで、骨髄腫では早くから異なる突然変異がガンの中に混在するため、ガンの増殖に関わるがん遺伝子を突き止め、分子標的治療を行う事が難しいという残念な報告だった。一方、最近サリドマイドに変わる薬として使われ始めようとしているレナリドマイドが、サリドマイドと比べた時IKZFと呼ばれるリンパ系細胞の発生に関わる分子に高い特異性を持っており、効き目が強く副作用が少ない事が期待できる事を紹介した。ただ現在の所では、骨髄腫に対する標準治療はMPT、即ち古くから使われて来たメルファランと呼ばれるアルキル化剤、プレドニン、そしてサリドマイドだ。現在ではこれに、自己の血液幹細胞移植を組み合わせ、先ず高濃度のメルファランでたたいてから、造血機能や抵抗力を抹消血から集めておいた自己の血液幹細胞を移植し回復を計ると言う治療法が行われ、良い成績を得ている。今日紹介する2編の論文は、基本的に骨髄腫治療に対するレナリドマイドの効果を調べた第3相試験の結果で、9月4日号のThe New England Journal of Medicineに続けて掲載されている。一編はイタリアトリノ大学からの論文、もう一編はヘルシンキ大学から論文で、それぞれ「Autologous transplantation and maintenance therapy in multiple myeloma(骨髄腫の自己幹細胞移植と維持療法)」及び「Lenalidomide and dexamethasone in transplant-ineligible patients with myeloma(自己幹細胞移植の出来ない骨髄腫に対するレナリドマイドとデキサメサゾン治療)」がタイトルだ。詳しい内容は全て割愛するが、最初の論文では、治療の中心をレナリドマイド、デキサメサゾンに据えて、それに加える様々なプロトコルを試した第3相試験だ。結論としては、先ずレナリドマイドとデキサメサゾンで約一ヶ月導入療法を行った後、メルファランの大量療法に自己幹細胞移植を組み合わせた4ヶ月コースを2サイクル繰り返し、その後レナリドマイドを飲み続けると言うプロトコルが最も効果が高い事が示されている。この方法だと、半分の患者さんが4年近く病気の進行なしに過ごす事が出来る。これに対し、他の方法だと大体2年で病気の進行が始まり、この差は大きい。将来の治療の中心になって行く事が予想できる。しかし残念ながら65歳以上の患者さんの多くは高濃度のメルファランと移植と言うプロトコルには耐えられない。従ってこれまでMPTという組み合わせが使われて来たが、この従来法と、メルファランを使わず、レナリドマイドとデキサメサゾンのみの組み合わせを検討したのが2番目の第3相試験だ。結果だが、腫瘍の進行を止められる期間が従来の方法では21ヶ月なのに対して、レナリドマイド、デキサメサゾンの組み合わせでは25ヶ月と明らかな延長が見られる。4年目で見た生存率は51%対59%で、劇的とは言えないが有意な差と言える。重要な事はメルファランを使わないため、副作用が少なく生活の質を向上させる事が出来る。骨髄腫には他にもプロテアソーム阻害剤の効果も確かめられており、骨髄腫に対する治療は着実に進展している事は明らかだ。患者さんの期待に答えられるよう、さらに最適のプロトコルへが開発される事を期待する。


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