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9月15日:AYA世代の白血病:フィラデルフィア染色体陽性型(9月11日号The New England Journal of Medicine)

2014年9月15日

小児期から20代までにかかるガンをAYA世代のがんとして特別に区別している。これは成熟期と比べた時、成長期の人の身体には様々な違いがあり、それを考慮した治療が必要とされるからだ。今年4月に、自らも胎児性がんを経験した岸田徹さんを招いて、AYA世代のガンの最近の論文について読書会を行いニコニコ動画で放送した。岸田さんはガンノートと言うサイトを立ち上げて特にAYA世代のガン患者さんのための多面的な活動を行っておられる(http://gannote.com/)。その時議論の中で、ガンゲノム解析をAYA世代のガン全てで行って、敵を知って戦う事の重要性を強調した。今日紹介するセントジュード子供病院からの研究はこの議論の重要性を再確認させるもので、9月11日号のThe New England Journal of Medicineに掲載され、タイトルは「Targetable kinase-activating lesion in Ph-like acute lymphoblastic leukemia(フィラデルフィア染色体(Ph)陽性急性リンパ芽球性白血病は標的薬の適用が可能なリン酸化酵素活性化異常が見られる)」だ。一般的に子供のかかる急性白血病は治療法が確立しており経過は良好だ。しかしそんな中でも少し治療が難しいグループがある。未熟B細胞由来の白血病で、特にPh陽性グループと分類されている白血病は治療が困難だ。一方、Ph染色体として表現されるBCR遺伝子とABL遺伝子が融合する異常を持つ白血病では融合遺伝子の活性を押さえる事で、白血病を飲み薬でコントロールする事が可能になっている。Ph染色体を持つ他の白血病でも同じ様な標的治療が可能ではないかと言う期待を持って、この研究では1700例以上の急性リンパ芽球性白血病の中からPh染色体陽性の154例選び出し、遺伝子解析を詳しく行った。結果は予想通りで、9割以上の患者さんが異なる染色体が融合する遺伝子転座を持ち、転座遺伝子の多くが、薬剤で治療可能なチロシンキナーゼ分子をコードする遺伝子の転座である事を発見している。さらに、このグループの多くでCRLF2遺伝子の転座による発現上昇がおこり、TSLPと呼ばれる本来はB細胞には効かないサイトカインが白血病の増殖を促進している事もわかった。また症例のほとんどでIKZF1と呼ばれる遺伝子の発現も上がっている。この論文では議論されていないが、ここで紹介したようにこの分子はレナリドマイドで特異的に分解可能な分子だ。このように、この白血病グループの増殖回路は比較的単純で、また特徴的な遺伝子発現が見られており、その分標的薬剤を使える可能性がある。この論文ではキナーゼ阻害剤をモデル実験系で試した後、12例の患者さんに試し、なんと11例の患者さんに薬剤が効いている事を報告している。これまで経過が悪いとされて来た白血病グループが、逆に最も治療し易い白血病へとかわるのではと期待させる結果だ。事実我が国でも、Ph陽性白血病にチロシンキナーゼ抑制剤が使われ始めている。おそらく未熟B細胞の生理に関わる他の標的薬も今後利用できるようになるのではないだろうか?(元未熟B細胞の発生を研究していた人間の私的意見)。しかし本当の標的治療を実現するためにはPh陽性と診断するだけでなく、出来るだけ正確に遺伝子異常を確かめる必要がある。簡便にこれを診断するための遺伝子アレーの導入を進めるとともに、当分はエクソーム解析などを提供する必要があると思う。若い世代は日本を支える力だが、経済的には一番苦しい世代でもある。是非この事を考えた公的・私的支援が彼らに届くよう岸田さん達と一緒に頑張っていきたい。


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