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9月24日:マイクロRNAを肺線維症治療に使う(EMBO Molecular Medicineオンライン版掲載論文)

2014年9月24日

8月20日にRNA干渉を用いたエボラ感染治療の論文を取り上げ、歩みは遅くてもRNAを用いる疾患治療が進みつつある事を紹介した。この時紹介したsiRNAの他に、臨床への応用が期待されているのがマイクロRNA(miRNA)だ。siRNAと比べた時、miRNAは一つの遺伝子が標的になるのではなく、特定の生物学的プロセスに関わる一つのセットのmRNAが標的になっており、そのプロセスに関わる分子全体の発現レベルを押さえるラフな調節を担っていると考えられる。従って、ガンの場合でも特定のガン遺伝子を抑制するのではなく、ガン細胞の全体的活性を抑制するために利用できないか研究が行われている。今日紹介するアメリカベンチャー企業miRagen Therapeuticsからの論文は、なるほどmiRNAに最適の疾患モデルを選んだと拍手したくなる研究で、EMBO Molecular Medicineオンライン版に掲載されている。タイトルは「MicroRNA mimicry blocks pulmonary fibrosis(マイクロRNA疑似分子は肺線維症を抑制できる)」だ。元々miRNAは私たちのゲノムの中にコードされているが、これが転写された後機能的miRNAになるための生化学プロセスはかなり明らかになっている。この会社は、細胞に取り込まれ易く分解されにくいmiRNAの開発を行なっているようで、今回の研究でも彼らが開発した修飾法で改変したmiRNA-mimicryと彼らが呼ぶ人口疑似miRNAの有効性を確かめることが目的だ。標的に選んだのは肺線維症だ。線維症では線維芽細胞が活性化され、細胞外マトリックスが分泌されるとともに、同様に分泌されるサイトカインにより、慢性炎症が起こり更に症状が悪化するというサイクルが回りだす。この線維芽細胞の活性化が起こる時miR29bと呼ばれる細胞外マトリックス分子やサイトカインのRNAレベルを調節するmiRNAの発現が低下し、これを細胞内に戻してやると正常化する事が知られていた。幸いこのグループが開発して来たmiRNAは肺の細胞に最も取り込まれ易い。この特徴を生かして、マウスにブレオマイシンと言う薬剤を注射した時起こってくる肺線維症をモデルに選び、miR29b人工疑似分子を投与する事で改善できるか調べている。結果は予想通りで、血中にmiR29bを投与すると、投与量に応じて肺の線維化が抑制され、また局所のサイトカインが押さえられる結果、局所の炎症を抑える事が出来る。残念ながら、生存率等の長期効果については全く触れられていないためこの論文だけで最終的判断をする事は難しい。またまだまだ動物モデルの研究にとどまっている。しかし、8月22日に紹介した様なエマルジョンを用いなくとも、miRNAに必要な化学的修飾を加えるだけでこれだけの効果が得られるならかなり期待が持てる。現在の所肺線維症には特効薬がなく、また急性で劇症の線維症の場合予後は極めて悪い。それを考えると自然と期待も大きくなる。これまで難しいとされて来たRNA創薬をベンチャー企業と大学(今回はエール大学)が協力して、確かな歩みを進めているのだと言う事をまた実感した。


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