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9月27日:実験膵ガンI  (9月25日発行Cell誌掲載論文)

2014年9月27日

ガンの研究には優れた動物実験モデルが必要だ。特に膵臓ガンのように、進行、転移が早いガンは初期段階についての研究が遅れる。このギャップを埋めるために動物モデルを使う。今週膵ガンの動物モデルを使った面白い論文が2報発表されたので、今日、明日と紹介する。ともに膵ガンの特徴とも言える強い間質の反応を扱っている。今日紹介するソーク研究所からの論文は、この間質反応にビタミンD受容体が関わる可能性を示す研究で、9月25日号のCell誌に掲載された。タイトルは「Vitamin D receptor-mediated stromal reprogramming suppress pancreatitis and enhances pancreatic cancer therapy(ビタミンD受容体により膵臓の間質細胞がリプログラムされると膵臓炎を押さえ、ガン治療を増強する)」だ。この研究も、明日紹介する研究もともにras遺伝子の活性型突然変異とp53癌抑制遺伝子欠損を膵管細胞で誘導して、人間の膵臓ガンに近いガンを発生させるモデルを使っている。この研究では先ずがん組織から膵臓の間質反応に重要な細胞として知られている膵臓星状細胞を分離し遺伝子発現を比べ、ビタミンD受容体が、マウスでもヒトでも星状細胞に強く発現している事を発見する。この研究を行ったロン・エバンスさんはホルモン受容体では世界の第一人者で、当然研究はこの分子のガンや炎症での機能へと進む。元々この受容体は間質細胞で発現しており、炎症を組織化していると考えられている。従って星状細胞での発現の意味を調べるべく、ビタミンD受容体をcalcipotriolという薬剤で刺激すると、細胞の活性化状態が収まり、元々の脂肪を貯めた細胞の形に戻る。さらに、マウスの膵臓炎症も同じ薬剤で押さえられる事がわかった。即ち、ビタミンD受容体は膵臓星状細胞の活性化を押さえ、炎症を抑える働きがある。同じようにガンで起こってくる膵臓の炎症性変化に対するビタミンD受容体刺激の効果を調べると、炎症や線維化が強く押さえられる事がわかった。最後に、膵臓ガンをジェムシタビンで治療するモデル実験系でビタミンD受容体刺激を行なうと生存期間が約50%伸びたと言う結果だ。まとめると、膵臓の星状細胞が活性化されると、様々な炎症性の因子を分泌し周りの間質を刺激する。これにより炎症が起こり、ガンが進行するが、これをビタミンD受容体刺激で押さえる事が出来るといううれしい結果だ。この研究でビタミンD受容体刺激に利用されたcalcipotriolは80もの治験がこれまで行なわれている。まだ膵臓がんや膵臓の炎症に対して治験は行なわれていないようだが、おそらく治験の行ない易い薬剤だと思う。研究自体の質としては普通の論文だが、膵臓ガンの緊急性から考えると重要な仕事であり、是非早期に臨床で効果が確かめられる事を期待する。


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