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10月23日:脊髄損傷の細胞治療(Cell Transplantationオンライン版掲載論文)

2014年10月23日

昨日BBCニュースを見ていたら、トップニュースで事故後2年たった脊髄損傷の患者さんが細胞移植で回復しリハビリをしている映像を見て驚いた。早速論文を調べてみると、Cell Transplantationというあまり聞き慣れない雑誌のオンライン版にトップで出ていた。治療はワルシャワ大学で行なわれ、ロンドンの脊髄損傷専門の研究所も参加している。英国の幹細胞研究助成金も受け取っており、ガセネタではないだろうと読んでみた。実際、脊損の患者さんたちは、この様な論文に一喜一憂し、多くの場合裏切られた気持ちになる事が多い。今回もぬか喜びに終わるかもしれないと慎重に読んでみたが、説得力を感じ紹介する事にした。タイトルは「Functional regeneration of supraspinal connections in a patient with transected spinal cord following transplantation of bulbar olfactory ensheathing cells with peripheral nerve bridging (脊損患者さんの脊髄結合を嗅球鞘細胞と末梢神経ブリッジで再生する)」だ。これまでも脊損の患者さんに対する細胞治療は行なわれて来た。中でも最も多く行なわれたのが、鼻粘膜から採取した再生力のある嗅細胞を培養して移植する方法だが、はっきり言って患者さんの期待に答える治療には発展していない。では今回の方法はこれまでとどう違うのか。詳細は割愛して、実際の治療過程をまとめておく。患者さんは38歳男性。外傷性に9番胸骨部の脊髄損傷で下半身が完全麻痺している。事故後21ヶ月後、手術下に片方の嗅球を切除、培養して鞘細胞、神経細胞、線維芽細胞などが混じった細胞集団を得ている。直接脳から再生力の高い細胞を採取する点がこれまでとは大きく違っている。ただ副作用として、臭いが一定期間失われる。次に試験管内で増殖させた細胞を投与するのだが、古い傷から上下に1ミリ程度余分に切除し、新しい新鮮な切断面を作り、そこから上下に細胞をマイクロマニュピレーターで注入している。その後、ふくらはぎから取り出した6cmの神経細胞を4等分し、カットした脊髄をつないであとはフィブリンをかぶせる。その後硬膜形成を行ない手術は終了だ。これまで行なわれて効果があると言われた末梢神経移植と嗅細胞移植を組み合わせている点が新しい試みだ。私が説得力を感じるのは回復の様子だ。リハビリを続けるが、4ヶ月間は全く回復の兆候がない。ところが、5ヶ月に入ると先ず体幹部、そして大腿と徐々に回復が進んでいる。脊損の程度を調べるASIAスコアも5ヶ月まではAと全く機能がないが、6−10ヶ月はB、そして11ヶ月からはCになっている。また、電気生理学的にも脊髄の結合が認められると言う。勿論1例だけで一喜一憂するのは間違っている。しかし、文章からもなんとなく自信が感じられるし、様々な可能性もしっかりと考慮している。今後更に症例数を増やして効果が確かめられるだろう。少なくとも私には何かありそうな気がする。勿論私は専門ではない。また多くの患者さんが、この様な論文に裏切られて来た事も知っている。その意味で、是非専門の人の意見を聞きたいと思っている。一度専門家を招いて、この論文の読書会をニコニコ動画で公開したい。


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